https://www.youtube.com/watch?v=9lYO1Ut6W1w
http://db.netkeiba.com/race/201305040806/
後方待機から直線では外に持ち出し、きっちり差し切りました。
ご存じの方も多いと思いますが、当初は翌日のダートの新馬に出馬投票を行ない、除外となったためにこちらの芝1400mのレースに鉾先を向けてきたという経緯があります。
そのへんも踏まえて、順次見ていくことにしましょう。
http://www.jbis.or.jp/horse/0001135372/pedigree/
まず血統ですが、父ディープインパクト×母オイスターチケットの4頭目の産駒になります。父母ともに金子オーナーの持ち馬だったことから、立て続けの交配となりましたが、3頭の全兄であるヴィジャイ、サングヒーロー、バジンガの成績は、残念ながらパッとしません。
クロフネ産駒の半兄ブラックシェルがNHKマイル2着&ダービー3着、同じくクロフネ産駒の半姉シェルズレイがローズS&チューリップ賞2着という実績と比較すると、著しく見劣ります。また、父ディープインパクト×母シェルズレイの4分の3同血の甥&姪であるククイナッツレイ、オーキッドレイ、カアナパリビーチと較べても、成績は物足りません。ヴィジャイのころは、POGでもけっこう人気があったように思いますが、最近は話題になることも少なくなりました。
しかし、カアナパリビーチの未勝利戦の投稿で、ゲットアテープについて自分は「この馬の出来は、上の全兄3頭とはケタが違うと思います」と書きました。また、ディープ×オイスターチケットの配合についても「柔らかすぎる欠点があるとはいえ、ディープ×トニービン×マルゼンスキー×トウショウボーイの配合には、捨てがたい魅力を感じるのも事実です」とも書いています。
そこらへんのところを説明していきたいと思います。
(1)ディープ×トニービンのおさらい
この配合については、これまでにも何度か触れました。
ディープもトニービンもナスキロ配合なので、柔らかい外回り向きの馬が出来やすい配合です。
そのままでは柔らかすぎて、本格化に時間がかかり、勝ち味に遅いという欠点があります。
しかし、勝ち上がり率や重賞での実績はなかなかで、基本的な相性は悪くありません。
問題は、柔らかさをどうカバーするかという点にあるでしょう。
(2)トニービンとテスコボーイ~トウショウボーイ
望田潤氏は、トニービンの交配相手として、ナスルーラとハイペリオンの両方の血を持つ牝馬が望ましいとされています。これは、トニービンの配合が、ナスルーラ系×BMSハイペリオン系であることによります。しかも、トニービンの祖父カラムーンは、ナスルーラ=リヴァズ3×3の全兄妹クロスがあり、トニービンの母セヴンブリッジには、ハイペリオン2×4のクロスがあるのです。
当ブログでは、トニービン×スペシャルの配合に注目してきましたが、原理は同じです。
で、テスコボーイは、典型的なナスルーラ×ハイペリオンのパターンになっており、トニービンとは相性がよさそうです。
また、テスコボーイ産駒のトウショウボーイは、ナスルーラ系×BMSハイペリオン系であるだけでなく、ハイペリオン3×4のクロスを持ちます。
オイスターチケットは、母のBMSがトウショウボーイで、テスコボーイ4×3のクロスがあり、BMSマルゼンスキーからは不足気味の米国血脈を補い、配合としては申し分のない感じです。
ですが、そこにディープとなると、産駒の成績がパッとしないというのは、何が原因なのでしょうか。個人的な推測にすぎませんが、やはりテスコボーイ4×3を持つ母馬というのは、ディープのお相手としては柔らかすぎ、クロフネのお相手としてはジャストフィットだったということではないか思われます。
(3)ディープ×トニービン×マルゼンスキー×トウショウボーイの見限れない魅力
そうはいいながらも、ディープ×ウイニングチケット(トニービン×マルゼンスキー)×トウショウボーイには、捨てがたい魅力があるのも事実でしょう。
トニービンとテスコボーイ~トウショウボーイは、配合の方向性が同じで、長所は伸ばす一方、短所は放ったらかしになりやすいです。
その意味では、トニービン×ヌレイエフと似たような配合と言えなくもありません。トニービンとBMSヌレイエフの配合は、ジャングルポケット以外には活躍馬はいないといってよい状況ですが、そのジャングルポケットが出たことが重要なのです。
しかも、トニービン×ヌレイエフに較べると、ディープ×トニービン×マルゼンスキー×トウショウボーイの配合は、米国血脈がきっちり補給され、マルゼンスキーにラトロワンヌの血があるのは大きなメリットです。
ディープ×オイスターチケットのかけ合わせは、クロフネ×オイスターチケットに較べると、アヴェレージは悪いかもしれませんが、一発大物が期待できる配合だと思います。
(4)ディープ×オイスターチケット×トウショウボーイ以外の話
血統の話の最後に、少しだけ母系にも触れておきます。
オイスターチケットの母系は、日本の伝統的な系統であるフローリースカップ牝系で、なかでも第九フローリースカップの分枝になります。この分枝からは、スズカコバンやカツラノハイセイコが出ました。
で、ゲットアテープの3代母ヤマニサクラには、ハリナ=プリメロ4×4の全兄妹クロスがあります。プリメロは、かつての日本の名種牡馬ですが、その全兄妹たちは皆そろって活躍しました。笠雄二郎氏によれば、プリメロとその全兄妹たちのクロスは、とくにパーソロン産駒で威力を発揮したそうです。これは、パーソロンの祖父マイリージャンの祖母アヴェナが、プリメロの全妹であることによります。成功例としては、ダービー馬サクラショウリ(アヴェナ=チョコロ4×4)、オークス馬タケフブキ(アヴェナ=ハリナ=プリメロ4×5・4)、桜花賞馬ダイアナソロン(アヴェナ=プリメロ4×5)など。
サクラショウリ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000077016/pedigree/
タケフブキ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000029978/pedigree/
ダイアナソロン
http://www.jbis.or.jp/horse/0000140596/pedigree/
タケフブキの母ハヤフブキのタリヤートス×ライジングフレーム×プリメロの配合は、ゲットアテープの3代母ヤマニサクラのタリヤートス×ライジングフレーム×トサミドリ(父プリメロ)とそっくりです。配合の形に再現性があるということは、その配合が優れていることの証明でしょう。
このプリメロとその全兄妹のクロスは、持久力や大レースでの底力に効果的とされています。
ちなみに、この全兄妹たちのクロスは、パーソロンの直仔だけでなく、孫以降の代になっても効果的でした。代表的な例として、メジロマックイーン(アヴェナ=プリメロ6×6)やトウカイテイオー(アヴェナ5×7)があげられます。
カツラノハイセイコ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000085885/pedigree/
先程、ゲットアテープと同じ母系の活躍馬として、カツラノハイセイコの名前をあげましたが、その母コウイチスタアにもハリナ=プリメロ4×4の全兄妹クロスがあります。この牝系とプリメロ兄妹の血の相性のよさが分かるでしょう。
スぺシャルウィーク
http://www.jbis.or.jp/horse/0000293624/pedigree/
さらに、マルゼンスキーを絡めて、スペシャルウィークの例もあげておきましょう。スペシャルウィークの母レディーシラオキには、ハリナ=プリメロ4×4がありますが、母系をさかのぼると、フローリースカップ~第四フローリースカップの系統です。
ゲットアテープとは、サンデー、マンルゼンスキー、プリメロ=ハリナの全兄妹クロス、バークレア≒オリオール、母系が共通していることになります。
http://umanity.jp/img_view_horse.php?code=2011103807
それでは、馬体のほうに話を移しましょう。
まず、ゲットアテープと3頭の全兄の2歳時の馬体画像を較べてみてください。
ヴィジャイ
http://www.jbis.or.jp/horse/images/0001091073_2/
サングヒーロー
http://image.news.livedoor.com/newsimage/6/b/6b02a_772_6595c9106f46da8ac44fff09a38bfe1e.jpg
バジンガ
https://livedoor.blogimg.jp/keiba100bai/imgs/c/c/ccdfa29e.jpg
ヴィジャイは、線が細くて胸が浅く、サングアヒーローとバジンガは、凹背(背ったれ)気味です。
対して、ゲットアテープは、ディープ×オイスターチケットにしてはガッチリしており、柔らかすぎる心配のある血統としては頼もしい馬体でしょう。先程も触れたように、全兄3頭とは出来が違うと思います。
ちなみに、ディープ×オイスターチケット一族としては、シェルズレイ産駒も含めて、初の新馬勝ちでした。
こうなると気になるのは、安田師がダートでデビューさせようとしたことでしょう。
レースの映像を見ると、かなりはっきりしたピッチ走法であることが分かります。ここまでピッチ走法らしいピッチ走法の馬は、過去のディープ産駒にはほとんど見かけなかったかもしれません。
ただ、欧州の馬のほとんどがピッチ走法であるように、ピッチ走法=ダート向きとは短絡的に決め付けられないのも確かでしょう。
また、トニービンは、ナスキロ配合にもかかわらず、欧州血脈が強いせいか、その血を持つ産駒は、前脚を掻き込むような走法(ピッチ走法とまでは言えないかもしれませんが)になりやすいです。
欧州の深い洋芝コースをこなすには、馬体が伸びきるようなストライド走法ではなく、前脚の掻き込みがどうしても必要なのだと思われます。
その意味では、ピッチ走法だからということに過度にこだわる必要はないと思いますし、ダートの新馬を除外になったことは幸運だったとさえ言えるかもしれません。
また、1400mという距離については、レース後にリスポリ騎手が「2400mでも走れるだけの性格と能力を秘めています」(サンケイスポーツ)とコメントしています。
最後に、今後の展望について。
やはり良馬場のレースを見ないことには、何とも言いにくいところもあります。
良馬場でも今回と同等のパフォーマンスが出来れば、クラシックへの道が開けてくるでしょう。
毎度お馴じみのダイジェスト版。
レース内容……完勝でしたが、良馬場でのレースを見たい。
血統……ディープ×トニービン×マルゼンスキー×トウショウボーイには一発の魅力あり。
馬体……全兄3頭とは比較にならない好馬体。