DP-Blog

ディープインパクト産駒を研究してPOGでの勝利を目指すシロウト競馬ファンの奮闘記

2016年10月

秋華賞回顧(編集中)

https://www.youtube.com/watch?v=vahtfSBebcA
http://db.netkeiba.com/race/201608040511/

http://www.jbis.or.jp/horse/0001169235/pedigree/

http://www.keibado.com/keibabook/161017/photo06.html

(以下、編集中)

1着同着

今回は、スズカフロンティアとサトノアーサーが、新馬戦史上8度目の1着同着となったレースを取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=oS2UdtIfQf0
http://db.netkeiba.com/race/201609040705/

レースは、前半5F65秒3の超スローペースで進み、スズカフロンティアは5番手、サトノアーサーはその直後という位置取りでした。3角すぎからペースが上がり、直線を向いてスズカフロンティアとサトノアーサーも先頭に並びかけますが、スムースに加速していくスズカフロンティアに対し、サトノアーサーのほうはギアチェンジに手間取る感じで、その隙をついてスズカフロンティアが抜け出します。断然の人気を背負ったサトノアーサーも懸命に追いかけ、3着以下を5馬身引き離しての競り合いは、新馬戦史上8度目の1着同着の結末でした。同着が8度目ということは、同一種牡馬の産駒による同着は、もしかしたら史上初の可能性もありそうです(サンデー産駒あたりに前例があるかもしれませんが)。
結果は同着でしたが、内容的には、スズカフロンティアが終始リードしていたと思います。最後は首の上げ下げで同着になったものの、馬体はスズカフロンティアのほうが前に出ていました。
しかし、サトノアーサーも、コーナーで外を回らされたロスも考慮すれば、別に悲観する内容ではありません。なんといっても、3着以下は5馬身も離れてしまいましたからね。とはいえ、今年のPOGの人気馬で、調教でも好時計が出ており、単勝も圧倒的な1番人気でしたから、負けなくてよかったといったところでしょうか。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001192768/pedigree/

それでは、まず、サトノアーサーのほうから血統を見ていくことにしましょう。
母キングズローズは、新豪香23戦8勝。新1000ギニーに勝っています。サトノアーサーは初仔。
3代母ラカブは、英10戦1勝。産駒のヘソナイトはG3勝ち馬。孫の代からは、G1戦2勝のアナバンダナが出ています。
4代母リヴァーララバイは、重賞勝ち産駒を3頭出した名繁殖牝馬。
5代母アラダンサーは、産駒のラテンアメリカンがG1に勝ちました。
母系は、アメリカの中堅どころの、サンファラ牝系。クリプトクリアランス、デヴィルメイケア、ボールドネシアンなどが出ています。日本では、まだこれといった大物は出ておらず、メジロダーリングやマルカシェンクが目立つ程度。輸入種牡馬のフレンチデピュティも、この牝系の出身です。

(1)よく似た配合例
サトノアーサーの配合は、ディープ×母父デインヒル産駒×母母父ヌレイエフとなっていますが、これによく似ているのは、ミッキーアイルの配合でしょう。

ミッキーアイル
http://www.jbis.or.jp/horse/0001141719/pedigree/

同じく、ディープ×母父デインヒル産駒×母母父ヌレイエフの配合パターンであることが見てとれます。デインヒル×ヌレイエフの配合では、当ブログではお馴じみの、フラワーボウルスペシャルの組み合わせのクロスが発生します。名牝ミエスクを生み出したこのクロスの威力は、現代においても、ガリレオ×デインヒルのニックスの根拠として、怪物フランケルをおくり出したように、まったく衰えることがありません。
また、ミッキーアイルには、ノーザンダンサーの血が4本もありますが、サトノアーサーの場合、なんと6本ものノーザンダンサーの血があります。ノーザンダンサーのクロスを持つ母馬の産駒は、成長が早く(早熟という意味ではありません)、春のクラシックを戦うには有利な要素ですが、6本ともなると、ディープ産駒に前例があるのかどうか、とにかく注目していく必要があるでしょう。

ジェンティルドンナ
http://www.jbis.or.jp/horse/0001110862/pedigree/

また、ジェンティルドンナの配合とも類似点が多く、ディープ×母父ダンジグ系×リファールのクロス×ネヴァーベンドが共通しています。

アキヒロ
http://www.jbis.or.jp/horse/0001115451/pedigree/

アキヒロは、フランスでG3重賞に勝ち、その時の3着馬ナショナルディフェンスが、フランスの2歳戦の頂点であるジャンリュックラガルデール賞に勝利したため、さらに注目度が上がっていますが、ディープ×母父ダンジグ系×ニジンスキー×リヴァーマンという共通項があります。

こうして見ていくと、サトノアーサーの配合は、これまでのディープ×ダンジグ系の成功例を踏まえたものとなっており、再現性の高い配合と言えそうです。

(2)リファールのクロス
(1)でも少し触れましたが、サトノアーサーには、リファールのクロスがあります。当ブログでは、単独のリファールのクロスは、いかにディープ産駒といえども、あまりおすすめ出来ないという立場です。
やはり、レイズアネイティヴ系の血か、ヘイロー≒サーアイヴァーのクロスの継続などのサポートがあったほうが成功しやすいでしょう。
サトノアーサーの場合は、サーアイヴァーの血がある(ヘイロー≒サーアイヴァー3・5×6)ので、後者のケースということになります。

(3)ディープ×ノーザンダンサー×スペシャル×ネヴァーベンド
ディープ×ノーザンダンサー×スペシャル×ネヴァーベンドの配合パターンは、つい先ごろ思いついたばかりで、まだ充分に考えがまとまってないのですが、とにかく成功例は大量にあります。具体的には、ディープブリランテマリアライト、ミッキークイーン、シンハライト&アダムスピーク、ショウナンアデラ、デニムアンドルビー、ヴァンキッシュラン、タッチングスピーチ、アキヒロ、ファイナルフォーム、ベストディールなどですね。

(4)まとめ
サトノアーサーの配合は、これまでのディープ産駒の成功パターンを多く含んでおり、いかにも活躍しそうな配合であるのは確かです。
気になる点があるとすれば、ダンジグやリファールのクロスが内回り向きなのに対して、サーアイヴァーやリヴァーマンが外回り向きの血である点です。
初戦のレース内容を見るかぎり、コーナリングはさほど上手くはなさそうで、直線でのエンジンのかかりも遅めのようなので、やや外回り向きの血が強く出ているといった感じでしょうか。
ディープ×母父ダンジグ系のこれまでの産駒たちを見ても、丸っこい馬体からピッチ走法を繰り出す内回り向きのタイプは、なかなか重賞に勝てないようです。成功しているのは、馬体に伸びのあるタイプで、詳しくは後述ということにしますが、サトノアーサーは、その点においても成功パターンに当てはまっているようです。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2016/assets_c/2016/09/satono-arser-thumb-550xauto-170746.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきます。
パッと見でも多くの人を惹きつける、垢抜けした好馬体であることに異論はないでしょう。馬体画像が公開されるや、一気にPOG人気が急上昇したのも頷けるところです。
上の方でも少し触れたように、ディープ×母父ダンジグ系の産駒の体型は、割合だけならば、丸っこい馬体でピッチ寄りの走りをするタイプが多数派なのは間違いないと思います。しかし、この多数派に属する産駒は、なかなか重賞に勝てません。出世頭は、オークス2着のエバーブロッサムあたりですが、その次はと言われても、急には思いつかないくらいです。
逆に、活躍しているのは、胴伸びのある少数派で、かなり胴長のサトノダイヤモンドは極端な例としても、ジェンティルドンナにせよ、ミッキーアイルにせよ、しっかり胴の長さがあります。
サトノアーサーも胴伸びのしっかりあるタイプで、血統表を見せられなければ、まず母父ダンジグ系とは思わない体型でしょう。
今年のデイープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牡馬の2位に取りあげましたが、そのさいには完成度の高い馬だと思ったのですが、今回のデビュー戦の内容やパドックの様子などを見るかぎり、むしろこれからの成長に期待したくなるタイプでしたね。

ジェンティルドンナ(3歳、オークス)
http://www.keibado.com/keibabook/120521/photo05.html
ミッキーアイル(3歳、シンザン記念)
http://www.keibado.com/keibabook/140114/photo07.html
サトノダイヤモンド(3歳、菊花賞)
http://www.keibado.com/keibabook/161024/photo01.html

エバーブロッサム(3歳、ローズS)
http://www.keibado.com/keibabook/130917/photo04.html

サトノアーサーの項の最後に、今後の展望について。
調教では好時計が出ていましたが、いざ実戦となると、未完成で荒削りな部分ばかりが目につきました。しかし、この時期はまだ荒削りくらいでちょうど良いと思うので、これから来春に向けての成長度がカギになるでしょう。その意味で注目されるのは、ノーザンダンサー6本入りの配合となります。これがどのような効果をもたらすのかで、結果が違ってきそうですね。
ぜひ、次走は、外回りコースでの走りを見てみたいと思います。その結果次第では、クラシックへの視界が開けていくかもしれません。

それでは、スズカフロンティアのほうに映りましょう。
まず、血統のほうから検討していきます。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001186396/pedigree/

母スズカフォイルは、26戦4勝。
祖母アンフォイルドは、17戦4勝。孫の代から、ダートG1戦10勝のホッコータルマエが出ました。
4代母パーフェクトフォイルは、自身は未勝利でしたが、産駒からは、重賞勝ち馬を2頭おくり出しています。
母系は、ダラカニ、ドバウィ、ロミタスなどの出た、名門セイントルーカー牝系。日本では、ホッコータルマエとリトルアマポーラが、G1に勝っています。

(1)フレンチデピュティとストームキャット
ディープ×フレンチデピュティは、ディープ×カーリアンやディープ×アンブライドルド(またはアンブライドルズソング)とともに、最も早い段階から知られたニックスです。
その後、ディープ×ストームキャットが一気に抬頭してきましたが、ここにあげた他の種牡馬たちと異なり、フレンチデピュティは輸入種牡馬なので、国内にお相手がたくさんいるというメリットがあります。

フレンチデピュティ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000362799/pedigree/
ストームキャット
http://www.jbis.or.jp/horse/0000337102/pedigree/

フレンチデピュティの比較対象として適当なのは、ストームキャットでしょう。共通点としては、ダートにも強い馬力型のノーザンダンサー系種牡馬であること、母馬がナスキロ配合であること、エイトサーティの血を持つこと、米国血脈中心でハイペリオンの血が不足気味であることなどです。
それでは、相違点というか個々のメリットについてはどうでしょうか。
まず、ストームキャットには、セクレタリアトの血があり、ディープにある半兄サーゲイロードと相似クロスが生じ、ナスキロ的な末脚の切れが強化されるため、キズナのような豪脚の持ち主が出たりします。
一方、フレンチデピュティの持つブルームーンの血は、サンデーの持つノーサードチャンスの血と相似クロスが発生し、アメリカンなパワーが強化されるので、ダート馬が出る場合も少なくありません。ディープ産駒唯一のダート重賞勝ち馬ボレアスは、母父フレンチデピュティです。

(2)ディープ×母父フレンチデピュティの成功例
ディープ×母父フレンチデピュティの配合のこれまでの成績は、37頭がデビューして30頭が勝ち上がり(うち2頭は地方)、重賞勝ち馬は5頭、G1馬はショウナンパンドラとマカヒキの2頭です。
重賞勝ち馬は5頭いるのですが、兄弟が2組いますから、実質3パターンというのは心もとないので、重賞2着の実績があるケイティープライドとアヴニールマルシェも加えて考えてみましょう。
まず、その前に、フレンチデピュティ×サンデー系の配合の基本を復習しておきます。

レジネッタ(フレンチデピュティ×サンデーの例として)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000887443/pedigree/

フレンチデピュティの配合の核は、グッドエグザンプルエイトサーティ5×4の相似クロスにあります。
また、(1)でも触れたように、サンデー系との配合では、エイトサーティの娘であるブルームーンと、サンデーの祖父ヘイルトゥリーズンの母ノーサードチャンスとの間に相似クロスが発生します(レジネッタの場合、ブルームーン≒ノーサードチャンス4×5)。
そして、エイトサーティとブルームーンの父娘関係により、グッドエグザンプル≒エイトサーティとブルームーン≒ノーサードチャンスの2つのクロスが結合されることがポイントであるのは、当ブログでも再三にわたって強調してきました。
しかし、ディープ×フレンチデピュティの配合を考える場合、さらなるプラスアルファが必要なようです。
そのプラスアルファとして、グッドエグザンプル≒エイトサーティあるいはノーサードチャンス≒ブルームーンのクロスを強化するというのは、1つのパターンとなっています。

マカヒキ
http://www.jbis.or.jp/horse/0001171707/pedigree/
カミノタサハラ
http://www.jbis.or.jp/horse/0001124109/pedigree/

マカヒキ&ウリウリの母母母父サザンヘイロー祖父はヘイルトゥリーズンですから、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×5・7と継続されます。
また、マカヒキの祖母リアルナンバーにはエイトサーティの血があるので、母ウィキウィキとして、グッドエグザンプル≒エイトサーティ6・5×7と、こちらも継続されているわけです。
カミノタサハラと兄弟たちのの祖母クロカミの父カーリアンと母ミルドには、それぞれヘイルトゥリーズンの血があるので、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×5・7・7と継続されています。
ケイティープライドは、祖母ケイティーズファーストに、ウォーレリックの血が2本あるので、母ケイティーズギフトとしては、グッドエグザンプル≒エイトサーティ≒ウォーレリック6・5×7・6と、やはり継続しています。
アヴニールマルシェは、母父ダンシングブレーヴの3代母チョコレートボウの配合が、ノーサードチャンス&ブルームーンと似ているので、ノーサードチャンス≒ブルームーン≒チョコレートボウ5×5・6となります。

もう1つの成功パターンとしては、フレンチデピュティに不足しているハイペリオンや欧州血脈を補うケースがあります。
手っ取り早いのは、望田潤氏が重視されている、バークレアがらみの組み合わせのクロスをつくることでしょう。
マカヒキはフィッシュバーフェアアリシア、カミノタサハラはオリオール、ケイティープライドはクリスの血が該当します。
他方、ショウナンパンドラの補強方法は独特です。

ショウナンパンドラ
http://www.jbis.or.jp/horse/0001140190/pedigree/

キューティゴールドには、ヴァイスリージェントノーザンテースト3×3という強烈な相似クロスがあります。ノーザンテーストには、ハイペリオン4×3という強いクロスがあり、ハイペリオンの血の補給に最適です。
また、ショウナンパンドラ自身には、サンルスードロニック5×4という、きわめて欧州色の濃い相似クロスがあります。

さて、以上の検討を踏まえて、スズカフロンティアのケースは、どのように考えればよいでしょうか。
祖母アンフォイルドには、ウォーレリックの血が2本と、その全姉スピードボートの血もあるので、母スズカフォイルとして、グッドエグザンプル≒エイトサーティ≒ウォーレリック≒スピードボート6・5×8・8・8と継続しています。
また、アスピディストラバックパサーマイディアガールの3頭は、ノーサードチャンス&ブルームーンと配合が似ています。そっくりとまでは言えませんが、組み合わせのクロスとは言えなくもないでしょう。
しかし、母スズカフォイルの配合は、米国血脈一辺倒に近く、残念ながら、ハイペリオン不足&欧州血脈不足は否めないようです。
なにか他の要素を付け加える必要があります。

(3)母母父アンブライドルド
ディープ×アンブライドルド~アンブライドルズソングの相性のよさの原因は、望田潤氏によれば、サーアイヴァーセキロ(アンブライドルドの父ファピアノの3代母)との組み合わせのクロス(プリンスキロ、マームード、サーギャラハッド=マルグリットドヴァロワ、マンノウォーが共通)にあるとのことでした。
では、フレンチデピュティにもそれらに類する血がないかと探してみると、その母ミッテランの配合には、プリンスキロ、マムタズビガム(≒マームード)、サーギャラハッド、マンノウォーの血がありました。
ということは、サーアイヴァーとミッテランとセキロの組み合わせのクロスが成り立っていることになり、これは、スズカフロンティアの配合のセールスポイントになりうるでしょう。

(4)まとめ
スズカフロンティアの配合は、ハイペリオン不足は気になるものの、ディープ×フレンチデピュティと、ディープ×アンブライドルドの2つのニックスを併せ持ち、しかも、ディープとフレンチデピュティとアンブライドルドが、サーアイヴァーとミッテランとセキロの組み合わせのクロスによって結び付けられているという、なかなか興味深い配合となっています。
サーアイヴァーもミッテランもナスキロ配合ですから、外回りで切れ味の鋭さを見せてくれるようなら、この配合は成功でしょう。次走以降に注目です。

パドック
https://livedoor.blogimg.jp/keiba100bai/imgs/f/6/f6e89861.jpg
表彰式
http://keibalab.jp/img/upload/topics/201610/161001_suzukafrontier03.jpg

引き続き、馬体のほうも見ておきたいのですが、残念ながら、分かりやすい画像はありませんでした。
パドックや表彰式の画像を見るかぎり、コンパクトにまとまった、ディープの牝馬産駒に多いような体型のように見受けられます。しかし、これらの画像では不充分なので、詳細は、もっと見やすい画像が入手できたらということにさせてください。

スズカフロンティアの項の最後に、今後の展望について。
やはり、最大の問題点は、牡馬としてはいかにも軽量な424キロの馬体重でしょう。せめて、もう10キロは欲しいところです。
しかし、成長のためのブースターとなりうるハイペリオンの血が不足気味なのは痛い。
どこまでウエイトアップ出来るかに、この馬の将来がかかっているといっても過言ではありません。

評判馬対決を制したのは

今回は、ムーヴザワールドの勝った新馬戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=LZCqpeE6Q3o
http://db.netkeiba.com/race/201609040605/

ムーヴザワールドの他にも、エアウィンザー、アドミラブル、ナイトバナレットなど、評判馬の揃ったレースとなりましたが、なかでも圧倒的な人気を集めたのは、エアウィンザーでした。エアスピネルの全弟という血統もさることながら、追い切りで古馬重賞級のタイムを連発しており、他に目を惹くような調教時計を出している馬がいないことから、一本かぶりの人気となったようです。
レースは、ムーヴザワールドが4~5番手の好位につけ、それを見るように直後にエアウィンザーという展開となりました。直線に入ると、ムーヴザワールド、エアウィンザー、ナイトバナレットが並んで逃げ馬に並びかけましたが、ここでムーヴザワールドの進路が狭くなり、エアウィンザーが先に抜け出します。遅れをとったムーヴザワールドは、態勢を立て直して狭いスペースに突っ込み、エアウィンザーとの叩き合いになりましたが、これを首差で制して新馬勝ちをおさめました。勝ち時計も、良馬場とはいえ、まだ前日の水分が充分に抜けきっていない時間帯のものとしては、まずまずのタイムだったと思います。
エアウィンザーの猛時計連発の調教に対して、ムーヴザワールドの仕上げは、新馬戦の勝ち負けにこだわらない石坂厩舎らしい控えめなものでしたし、春のクラシックには全く間に合わなかったタッチングスピーチの全弟という点からも、初戦から動けるのか疑問視されたところもありましたが、それでも競り勝ったということは、素質の高さを見せつけたものといってよいでしょう。
なお、次走は、東京スポーツ杯2歳Sの予定だそうです。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001191568/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母リッスンは、英G1・フィリーズマイル(芝8F)の勝ち馬。産駒には、ムーヴザワールドの全姉タッチングスピーチや全兄ニューワールドパワーがおり、さらに1歳下の全妹や2歳下の全弟もいます。
祖母ブリジッドは、仏5戦1勝。産駒は、シクウォイア&リッスンの全姉妹が、いずれもG1を勝ちました。シクウォイアの産駒からは、G1戦4勝のヘンリーザナヴィゲーターが出ています。また、シクウォイア&リッスンの半姉レディウィンダミアは、自身は未出走でしたが、孫にG1戦2勝のマジシャンが出ました。
3代母ラヴラヴィンは、ブリジッド以外にも、オアヴィジョンやリタニリヴァーなどの優れた繁殖牝馬を出し、そちらの分枝からもG1馬が出ています。
母系は、メダグリアドーロ、ヘンリーザナヴィゲーター、インディアンスキマーなどの出た、アメリカの名門アイドルファンシー牝系。日本には、まださほど入ってきていない系統で、G1馬は出ておらず、タッチングスピーチやアイポッパーが目立つくらいです。

(1)ディープ×サドラーズウェルズ
ディープ×母父サドラーズウェルズの配合は、これまでに10頭がデビューして、半数の5頭が勝ち上がり、重賞勝ち馬はタッチングスピーチだけ。勝ち上がり率も平凡で、大物もリッスン産駒が期待されているだけという状況です。
しかし、母父以外でサドラーズウェルズの血が入っているケースということになると、事態は一変します。トーセンラー&スピルバーグ、ディーマジェスティ、マリアライト、シンハライト&アダムスピーク、アンビシャス、ヴァンキッシュラン、パララサルーなど、数多くの活躍馬が出ているのです。ディープ×ヌレイエフの相性のよさや、ハープスターの例なども考え合わせると、ディープとサドラーズウェルズの相性が悪いとは、とうてい思えないでしょう。
やはり、問題になっているのは、配合的な相性ではなく、日本の高速馬場に向かない欧州的な重さということになります。成功馬の配合から考えると、そうした重さの対応策には、いくつかのパターンがあるようです。
まず、手っ取り早いのは、ミスプロの血を入れることでしょう。トーセンラー&スピルバーグやアンビシャス、マリアライト、ヴァンキッシュラン、パラサルーなどが該当します。
最近、増加傾向にあるパターンとしては、ヘイローがらみのクロスを作ること。シンハライト&アダムスピークやアンビシャスが、このパターンになります。
あとは、ミルリーフやリヴァーマンの血を入れて、ボールドリーズンネヴァーベンドの兄弟クロスを作るパターン。マリアライト、シンハライト&アダムスピーク、タッチングスピーチなどが当てはまり、ムーヴザワールドもこれになります。
付け加えるなら、タッチングスピーチ&ムーヴザワールドには、ミスプロの血は無いものの、その父のレイズアネイティヴの血はあります。
結論として、タッチングスピーチ&ムーヴザワールドの姉弟の場合、サドラーズウェルズの重さの処理は、それなりになされていると判断して良いでしょう。

(2)ディープ×ノーザンダンサー×スペシャル×ネヴァーベンド
ディープ×ミスプロ×ノーザンダンサー×スペシャルは、栗山求氏の提唱された好配合パターンですが、ミスプロをネヴァーベンドに置き換えたらどうだろうか、というのは自分の思い付きです。サドラーズウェルズと、ミルリーフやリヴァーマンなどのネヴァーベンド産駒とが、ニックス関係にあることからヒントを得ています。
とはいえ、ノーザンダンサー×スペシャルといっても、ネヴァーベンドとの関係を考えると、サドラーズウェルズとヌレイエフとでは事情が違ってきます。サドラーズウェルズの場合、ボールドリーズン≒ネヴァーベンドの兄弟クロスが発生しますが、ヌレイエフにボールドリーズンの血はありません。しかし、サドラーズウェルズの血が、ガリレオを通して世界的に発展していく一方、ヌレイエフの父系が伸び悩んでいるのは、ボールドリーズンの血の不在にあると考えることも出来ます。したがって、ボールドリーズンの血を持たないヌレイエフは、それに類する血を切実に欲しているのではないかという仮説に辿り着くわけです。むしろ、ネヴァーベンドの血をプラスする意味は、ヌレイエフの場合の方が大きいのかもしれません。
さて、ディープ×ノーザンダンサー×スペシャル×ネヴァーベンドという配合パターンの成功例としては、ディープブリランテ、マリアライト、ミッキークイーン、シンハライト&アダムスピーク、ショウナンアデラ、デニムアンドルビー、ヴァンキッシュラン、タッチングスピーチ、ベストディールなどがあげられます。
ネヴァーベンドを追加する効果は、ナスキロラトロの配合形を作りやすいということです。ディープの末脚の配合的な根拠であるナスキロ配合に、ラトロワンヌのパワーも付加して、より効果を高めようということですね。

(3)トレヴとの類似点

トレヴ
http://www.pedigreequery.com/treve3

以前、タッチングスピーチを取りあげた時にも指摘したのですが、トレヴとは配合的な類似を感じます。具体的には、ノーザンダンサー+スペシャル、リヴァーマン、レイズアネイティヴ、レディビーグッド≒プレイヤーベル、ヘイルトゥリーズン、リファール、カミーニー≒サンルスー、セクレタリアト≒サーアイヴァー、フェオラ(ディープの6代母、モナーキーとオリオールの祖母)が共通しているわけです。
やはり、成功する配合には、なにかしらの共通点があるのでしょう。

(4)まとめ
タッチングスピーチは、春のクラシックに間に合いませんでしたし、セレクトセールで高額落札されたニューワールドパワーは、3歳の春になってようやくデビューしましたが、まだ使い込むことが出来ないようで、3戦未勝利の状態です。
いかにも、晩成血統という雰囲気が漂ってくるわけですが、案に相違して、ムーヴザワールドは、評判馬を撃破して新馬勝ちをおさめました。
たしかに、サドラーズウェルズの血を除いては、それほど晩成の血が多いわけではなく、春のクラシックに間に合ったとしても不思議ではありません。
ただ、デビュー戦の馬体は、いかにも緩い感じで、素質だけで強引に勝ち上がったという気もします。そのあたりが、今後の注目点ということになるでしょう。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2016/assets_c/2016/09/38df0e98c389b94c626f0316b16d73649bd4335b-thumb-550xauto-169628.jpg

引き続き、馬体のほうも見ておきましょう。
お姉さんのタッチングスピーチは、サドラーズウェルズ色の濃い胴長体型でしたが、弟のほうは大柄ですが、あまりサドラーズウェルズの影響は感じられません。がっしりとした中距離体型でしょう。
一番の不安点は、馬体重が増えすぎたのではないかということでしたが、なんとか510キロでストップしてくれました。これならば、常識の範囲内のサイズでしょう。
今年のデイープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牡馬の3位に取りあげました。

タッチングスピーチ(2歳)
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2014/assets_c/2014/11/tacching%20speach-thumb-450x334-84557.jpg

サドラーズウェルズ
http://www.blacktypepedigree.com/sites/default/files/field/image/sadlers_wells.jpg

最後に、今後の展望について。
早々と次走の予定が発表になりましたが、いきなり東スポ杯ということは、陣営が今回のレース内容に手ごたえを感じている証拠でしょう。
しかし、東スポ杯ということなら、かなり厳しいメンバー構成になることは確実です。ムーヴザワールドの将来性を計る試金石となりますね。ここを通過できるようなら、クラシック候補として大きくクローズアップされることになるでしょう。
もちろん、晩成寄りの血統であることを考えると、完成度の差でやられるケースも考えられます。しかし、血統的な成長力を考えあわせるなら、ここでの勝敗はさほど重要ではなく、しっかり来春のクラシックにつながるレースをしてくれれば充分だと思います。
最新記事
アーカイブ
記事検索
プロフィール

Copper

Google ブログ内検索
  • ライブドアブログ