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ディープインパクト産駒を研究してPOGでの勝利を目指すシロウト競馬ファンの奮闘記

2019年11月

東京スポーツ杯2歳S戦評

東京スポーツ杯2歳Sを簡単に振り返っておきます。
コントレイルの配合についても、前回の投稿内容に補足しておきたいことがあるので、追加したいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=ckjgX_XFZx8
https://race.netkeiba.com/?pid=race&id=c201905050511&mode=result
http://keiba.radionikkei.jp/keiba/post_19347.html

ディープ産駒3頭による三つ巴のレースだと思っていましたし、その3頭によるワンツースリーで決着したわけですが、ここまで着差が開くとは予想もしていませんでした。
レースは、ラインベックが先行し、コントレイルは中団、アルジャンナは後方2番手から進めましたが、直線でコントレイルが抜け出すと、追いすがるアルジャンナとの差がみるみる開いていき、最後は5馬身差のレコード勝ち。ラインベックは、さらに4馬身遅れての3着でした。
着差も驚きでしたが、1分44秒5という勝ち時計は、いくら馬場状態が良いということを考慮したとしても、2歳馬離れしたものと言わざるをえません。ちなみに、2着アルジャンナの1分45秒3の走破タイムも、従来のレコードを更新するものでした。
今回の圧勝劇により、コントレイルは、クラシックの最有力候補に浮上したわけですが、しいて問題点をあげるとすれば、距離が延びてどうかということでしょう。2000mまでは問題ないとして、ダービーの2400mがどうなるか、注目されるところですね。
なお、レース後、矢作師より、次走は年末のホープフルSに向かうとのコメントがありました。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001237042/pedigree/

引き続き、コントレイルの配合について、前回の補足です。

(1)サーアイヴァー≒セキロ≒インカンテイション
ディープ×アンブライドルズソングのニックスの根拠は、、望田潤氏によれば、サーアイヴァーセキロインカンテイションの組み合わせのクロス(プリンスキロ、マームード、サーギャラハッド=マルグリットドヴァロア=ブルドッグ、マンノウォーが共通)にあるということですが、コントレイルの場合、そのニックス要因のクロスが増幅されているとも指摘されています。どういうことなのか、母ロードクロサイトの配合を検討してみましょう。

ロードクロサイト(コントレイルの母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0001157855/pedigree/

ロードクロサイトには、さまざまなクロスがありますが、ここでは、ファピアノ3×4のクロスと、インカンテイション4×5のクロスに注目です。

ファピアノ(アンブライドルズソングの祖父&ロードクロサイトの母母母父)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000336225/pedigree/

血統表を見ると、ファピアノ3代母がセキロであることが判ります。つまり、ファピアノ3×4のクロスがあるということは、自動的に、セキロ6×7のクロスも生じているわけです。
ということは、ロードクロサイトの配合は、セキロとインカンテイションの両方の血を、クロスにより増幅させていることになります。
コントレイルとして図式化してみると、サーアイヴァー&セキロ(×2)&インカンテイション(×2)の組み合わせのクロスということになるわけですね。

(2)父母相似配合
(1)の内容をさらに発展させると、ロードクロサイトは、広い意味での父母相似配合と見なすことが出来そうです。

アンブライドルズソング(ロードクロサイトの父)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000361396/pedigree/
フォークロア(ロードクロサイトの母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000906032/pedigree/

アンブライドルズソングとフォークロアは、ファピアノ~セキロの血と、インカンテイションの血を持っていることは、(1)で確認した通りです。
ロードクロサイトにあるクロスの内、さらに注目すべきは、インリアリティ5×5・5のクロス、オリンピア5×7のクロス、ベターセルフブサンダストライキングブッシャー7・7・7×9・9・8・7の相似クロスの3つです。
インリアリティのクロスが重要なのは、父系がウォーレリックの系統だからです(さらに、ウォーレリック3×3という強いクロスになっています)。ディープ×ストームキャット×ウォーレリックは、望田氏が指摘される成功パターンの配合で、そのウォーレリックの血が、インリアリティのクロスによって増幅されているわけですね。
オリンピアは、父がヘリオポリス、祖父はハイぺリオンです。ファピアノ~アンブライドルドの系統は、ハイぺリオンの血を持っていないことが弱みでした。しかし、アンブライドルズソングの代で、オリンピア経由でハイぺリオンの血が入り、弱点が解消されたため、一転してG1に強い系統へと生まれ変わったのです。祖父ファピアノと父アンブライドルドが出したG1馬は、それぞれ12頭ずつでしたが、アンブライドルズソング産駒のG1馬は、22頭と大幅に増加しています。アンブライドルズソングにG1馬量産を可能にした要因こそ、オリンピア~ヘリオポリス~ハイぺリオンの血なのです。
ちなみに、オリンピアの父ヘリオポリスは、サンデーと好相性なことで有名です。その理由は、サンデーの持つガルフストリームの血にあり、ガルフストリーム≒ヘリオポリスの相似クロスが生じることにあります。ディープの母ウインドインハーヘアにも、似たような配合のオーロラという血があるので、ディープ×アンブライドルズソングの配合では、ガルフストリームオーロラヘリオポリスの相似クロス(ハイぺリオン、スウィンフォード、マルコが共通)が発生するわけですね。
ベターセルフ、ブサンダ、ストライキング、ブッシャーの4頭は、いずれも、ラトロワンヌウォーアドミラル絡みの配合です。ロードクロサイトが、超名門牝系であるラトロワンヌ系の出身であることは、前回も触れたとおりですが、アンブライドルズソングの側にもかなりのラトロワンヌの血があります。とくに、ウォーアドミラルの血とは好相性で、望田潤氏がサンデー時代にプッシュしていた配合として、サンデー×ミスプロ×ウォーアドミラル×ラトロワンヌというパターンがありましたね。
たんに、父母それぞれにラトロワンヌの血があるというだけでなく、ロードクロサイトが、ラトロワンヌの直系であることが重要で、それを、アンブライドルズソング側のラトロワンヌの血が増幅させているわけです。

ロードクロサイト
https://www.jbis.or.jp/horse/0001157855/pedigree/

さて、最後にもう一度、ロードクロサイトの血統表を眺めてみましょう。父アンブライドルズソングと、母フォークロアとは、パッと見ではさほど似ているようにも思えないのですが、配合のキーポイントとなる、ファピアノ~セキロ、インカンテイション、インリアリティ~ウォーレリック、オリンピア~ヘリオポリス、ラトロワンヌ+ウォーアドミラルの血を共有していることが判ります。父母の双方がキーとなる血を持つことで、クロスが形成され、それらの血が増幅されていくわけです。これが、父母相似配合が効果的であることの原理になります。

以上が前回の補足になりますが、それ以外のことについては、前回の投稿を参照してください。

ディープ×アンブライドルズソング×ストームキャット

日付が変わってしまいましたが、東京スポーツ杯2歳S出走予定のディープ産駒の最後は、コントレイルを取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=YV_07CsH1WQ
https://db.netkeiba.com/race/201909040405/

コントレイルは、ノースヒルズの生産馬ですが、POGシーズンの人気は控えめなものでした。というのも、ノースヒルズの前田オーナーは、その年の期待馬をストーレートに包み隠さず仰るタイプで、その発言がそのまま生産馬のPOG人気に反映されるわけです。これは、生産馬を基本的に外部に出さないオーナーブリーダーならではでしょう。で、前田オーナーの今年の期待馬はというと、キズナの初年度産駒である、ビアンフェやリメンバーメモリーの名前が大々的にあがりましたが、牡牝あわせて3頭いるディープの2歳産駒は、牝馬のロニセラの名前がちらっと出たかなという程度でしたね。
しかしながら、調教の段階になると、なかなかの動きの良さを披露し、結局、デビュー戦では断然の1番人気に推されることになりました。レースは、抜群のスタートから好位につけ、持ったまま直線に入ると、最後は軽く気合をつけましたが、ほぼ持ったままで2馬身半差の楽勝でした。メンバーのレベルには疑問が残りましたが、レース内容は素晴らしかったと思います。
ただ、いきなり重賞挑戦、しかも東京スポーツ杯2歳Sというのは、正直、意外でした。一気に相手関係が強化されるので、どこまで対応できるかは、注目されるところですね。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001237042/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母ロードクロサイトは、7戦未勝利。産駒は、まだこれというほどの活躍馬を出していません。
祖母フォークロアは、米8戦4勝2着3回3着1回、G1戦2勝、G2戦1勝。競争成績は、素晴らしいのですが、繁殖に上がってからの成績は、かなり物足りない感じです。
4代母ジーノは、米49戦10勝。G3重賞を2勝しています。
5代母バジーは、米31戦9勝。米G1・デラウェアH(ダート10F)に勝ちました。産駒は、ジーノがそこそこ活躍しましたが、それ以外はパッとせず、晩年は日本に輸入されましたが、これといった産駒は出ませんでした。
母系は、超名門ラトロワンヌ牝系。活躍馬は、あまりにも多すぎるので、ラトロワンヌの4番仔&コントレイルの9代母ベイビーリーグの分枝から出た馬に限ると、ナンバードアカウント、スマーティジョーンズ、マインシャフトなどがあげられます。日本におけるこの分枝の活躍馬は、スクリーンヒーローやダイナアクトレスが出ていますね。

(1)ディープ×アンブライドルズソング×ストームキャット
ディープ×母父アンブライドルズの配合は、レッドベルジュールを取りあげたさいに扱ったばかりですが、おさらいしておくと、20頭がデビューして、18頭が勝ち上がり(全て中央)、重賞勝ち馬は2頭、ダノンプラチナがG1に勝ちました。レッドベルジュールが、あらたに重賞ウイナーの仲間入りをしましたね。

レッドベルジュール
https://www.jbis.or.jp/horse/0001236815/pedigree/
ブレッシングレイン
https://www.jbis.or.jp/horse/0001236264/pedigree/

これもレッドべルジュールの投稿で触れたのですが、ディープ×アンブライドルズソング×ストームキャットの配合の産駒が、今年はすでにレッドベルジュール、ブレッシングレイン、コントラチェックと3頭もデビューしており、いずれも新馬勝ちを収め、レッドベルジュールはデイリー杯2歳Sを制しました。
トータルでも、8頭がデビューし、8頭すべて中央で勝ち上がっています。
ディープ×ストームキャットと、ディープ×アンブライドルズソングという、代表的な2つのニックスを組み合わせただけなのですが、それでも好成績というのは興味深いですね。

(2)祖母フォークロアの配合
望田潤氏の指摘によると、フォークロアの配合は、ダノンキングリーの母マイグッドネスの配合によく似ているそうです。

フォークロア(コントレイルの祖母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000906032/pedigree/
マイグッドネス(ダノンキグリーの母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0001157818/pedigree/
ティズワンダフル(アルジャンナの母父)
https://www.jbis.or.jp/horse/0001031113/pedigree/

この点に関しては、前々回のアルジャンナの投稿で、アルジャンナの母父ティズワンダフルとも絡めて検討したばかりですね。
フォークロアとマイグッドネスとは、ストームキャット、リローンチ、リファール、レイズアネイティヴが共通です。
フォークロアとティスワンダフルとは、ティズナウ、ストームキャット、ミスプロが共通しています。

コントライヴ(コントレイルの3代母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000795543/pedigree/
マジックストーム(ラキシス&サトノアラジンの母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000719406/pedigree/

さらに、コントレイルの3代母コントライヴは、ラキシス&サトノアラジンの母マジックストームの配合とよく似ています。ストームキャットとファピアノが共通しており、血量的には、4分の3同血になります。
これだけ似たような配合の成功例が続くと、パターン化が可能なようにも思われますが、もうすこし様子を見守ることにしましょう。

(3)リファールのクロス
コントレイルの母母父ティズナウには、リファールの血が含まれているので、コントレイルとしては、リファール4×6のクロスが生じます。
リファールのクロスは、単独では重苦しくなることも多いのですが、それを緩和してくれるミスプロの血が2本もあるので、問題ないでしょう。

(4)まとめ
レッドベルジュールやアルジャンナと比較すると、母ロードクロサイトの持つ、ファピアノ3×4や、インリアリティ5×5・5に代表されるように、より米国血脈的なパワフルさが前面に出ている配合です。インリアリティは、ウォーレリックの系統なので、ストームキャットの血とは相性がよいでしょう。母系がラトロワンヌ系ということも併せて、配合的には、アメリカンなパワーの要素が目につきます。
反面、成長力のカギとなるハイぺリオンの血は、ノーザンダンサーのクロスに頼ることになりそうです。そのあたりがどうなるかですね。

https://i.daily.jp/horse/toranomaki10/2019/05/06/Images/d_12296790.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
ディープ×アンブライドルズソング×ストームキャットの配合は、アンブライドルズソングが強く出るか、ストームキャットが強く出るかによって体型が変わってきます。
アンブライドルズソングが強く出ると、ダノンプラチナのような胴伸びのある体型となりやすく、代表的な例としては、レッドベルジュール&レッドベルディエスがあげられます。
ストームキャットが強く出ると、ダノンキングリーのようなしっかりまとまった体型となりやすく、代表例としては、コントレイルやレッドベルローズがあげられるでしょう。
ブレッシングレインは、両者の中間といった感じですね。
ぜひ、画像を見くらべてください。

ダノンキングリー
https://umanity.jp/image/horse/20161021794956.jpg
レッドベルローズ
http://www.tokyo-tc.com/mng_h_img/org_kinkyo_RedFantasia15_11.jpg

ダノンプラチナ
http://www.keibado.com/keibabook/141222/photo10.html
レッドベルジュール
https://www.tokyo-tc.com/mng_h_img/org_kinkyo_RedFantasia17_13.jpg
レッドベルディエス
http://www.tokyo-tc.com/mng_h_img/org_kinkyo_RedFantasia16_11.jpg

ブレッシングレイン
https://umatokuimg.hochi.co.jp/horseimages/2017/2017104315/2017104315_201904091421539.jpg

最後に、今後の展望について。
デビュー戦の内容は素晴らしかったのですが、アルジャンナやラインベックの新馬戦と同様に、出走馬のレベルはかなり低かったようです。というわけで、東京スポーツ杯2歳Sが試金石というのも同じですね。前日のオッズでは、3頭ほとんど差がなく、人気を分けあっています。
しかし、アルジャンナやラインベックに較べると、コントレイルは、ハイぺリオンの血の量で一歩も二歩も劣っているので、早い段階から結果を出す必要があります。3頭の中で、最も勝利を必要としているのは、コントレイルということになるでしょう。最低でも、好勝負に持ち込む必要があります。はっきり差をつけられて負けるようだと、今後の巻き返しは厳しくなりそうです。はたして、このメンバー相手に勝ち切ることは出来るのでしょうか。

中京2歳S短評

東京スポーツ杯2歳S出走予定馬の2頭目は、ラインベックを取りあげましょう。

新馬戦
https://www.youtube.com/watch?v=LHsRjR-znBM
https://db.netkeiba.com/race/201907030105/

中京2歳S
https://www.youtube.com/watch?v=dNrM_-dcX3E
https://db.netkeiba.com/race/201907030709/

ラインベックは、ディープ×アパパネの12冠配合から誕生した3頭目の産駒ですが、いろいろと順調さを欠いた上の2頭に対して、スムースにデビューまで運べたということで、netkeibaのPOG指名数では全体4位(ディープ牡馬では2位)と人気を集めました。
デビュー戦は、一本被りの1番人気をうけて、番手からそつのない競馬で完勝でした。ただ、ジナンボーのデビュー戦にくらべると、ややインパクトには欠けたかもしれません。
新馬戦の後の友道師のコメントでは、いったん放牧が示唆されたのですが、なぜか中京2歳Sに出走してきて、ちょっと驚かされました。友道師が考えを変えたというよりも、金子オーナーの意向が優先されたものだと思われます。例年、メンバーの揃わないレースですが、ラインベックの出走により、さらにメンバーのレベルが下がり、出走馬8頭中、未勝利馬が半数以上の5頭という異常事態となってしまい、ラインベックが快勝したのは当然としても、2着は未勝利馬という、なんとも締まりのない結末でした。ちなみに、2着のスズカデレヤは、ラインベックのデビュー戦の5着馬でしたね。金子オーナー的には、行き掛けの駄賃なのかもしれませんが、友道師的には、あまり得るところがないレースだったと思います。しいて言えば、賞金が加算できたのと、道悪競馬を体験できたことの2点が収穫だったでしょうか。
評判馬がデビュー2連勝とはいっても、中京2歳Sのメンバーは問題外という感じでしたから、明日の東京スポーツ杯2歳Sは、真価が問われる一戦となるでしょう。前日のオッズは、3番人気にとどまっていますが、見返すことが出来るでしょうか。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001233862/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきます。
母アパパネは、牝馬を3冠を制し、G1戦5勝。産駒は、初仔がモクレレ(15戦3勝、現役)、2番仔はジナンボー(7戦4勝、現役)、ラインベックは3番仔になります。モクレレは、2勝クラスの上位争いの常連といったレベルですが、ジナンボーは、裂蹄による長期休養がありながらもオープン入りを果たし、前走は新潟記念で2着とし、重賞制覇は目前というところまで来ています。
祖母ソルティビッドは、12戦3勝。オープン特別を2勝し、重賞ではフェアリーS2着。産駒は、アパパネが大活躍したものの、それ以外はパッとしません。
3代母パイパーパイパーは、米26戦2勝。G1で3着に来たことがあります。
母系は、名門エスカッシャン牝系。スルーオゴールド、クリームフレシュ、ナサニエルなどが出ました。日本では、エリモシック、トゥザヴィクトリー、アパパネなどが出ていますが、ディープとの相性のよさでも知られる系統で、マルセリーナ、アユサン、デニムアンドルビー、サトノルパンが重賞に勝っています。

(1)ディープ×キングカメハメハ
ディープ×母父キングカメハメハの産駒は、30頭がデビューし、24頭が勝ち上がり(うち1頭は地方)、重賞勝ち馬が2頭、ワグネリアンがダービーに勝ちました。未勝利馬6頭中、2頭はキャリア1戦の2歳馬なので、実際には、もっと勝ち上がり率は高いと考えてもよいでしょう。
ブログ開設時から、ずっとニックス候補に推してきた配合なので、しっかり結果が出たのは嬉しいですね。

(2)デニムアンドルビーとの類似
上でも触れたように、デニムアンドルビーとは、母系が同じです(エスカッシャン牝系)。

デニムアンドルビー
https://www.jbis.or.jp/horse/0001126790/pedigree/

図式化すると、ディープ×母父キングカメハメハ×エスカッシャン牝系となりますが、ジナンボー&ラインベックがオープン馬で、デニムアンドルビーはG2勝ち、その全弟キタノコマンドールもオープン特別勝ちということで、再現性もそれなりに高いように思います(モクレレや、デニムアンドルビーの全妹ヤマノフェアリーも、まったく走っていないというわけではないので、外れの無い配合ですね)。

(3)アパパネの配合
アパパネは、その母ソルティビッドの配合が雑然としているので、結果として、ポイントが掴みづらい印象を受けます。

ソルトレイク(アパパネの母父)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000339861/pedigree/
トライマイベスト(キングカメハメハの母父父)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000336129/pedigree/
ニジンスキー(キングカメハメハの母母母父父)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000333996/pedigree/

しかし、キングカメハメハの母マンファスの配合の核が、トライマイベスト≒ニジンスキー2×4の相似クロスにあることに注目するなら、トライマイベスト&ニジンスキー&ソルトレイク(アパパネの母父)の組み合わせのクロス(ノーザンダンサー、メノウ、ブルドッグ=サーギャラハッド、マンノウォー、ブルーラークスパーが共通)に注目すべきでしょう。
ディープは、ニジンスキーと相性がよく、ニジンスキー絡みのクロスを持つ繁殖牝馬とも結果を出しています。たとえば、ラキシス&サトノアラジン姉弟や、グランアレグリアなどがそうですが、ラインベックも含めて強引に図式化すれば、ディープ×ミスプロ×繁殖牝馬の持つニジンスキー絡みのクロスということになるでしょうか。ちょっと無理気味かもしれませんが、ディープ×マジックストーム、ディープ×タピッツフライ、ディープ×アパパネなどは、いずれも全兄弟が成功している配合なので、すなわち、再現性の高い配合と考えることは可能だと思っています。

(4)まとめ
キングカメハメハ×ソルティビッドの配合は、アパパネだけが成功しており、3頭の全姉弟妹は空振りに終わっているのに対し、ディープ×アパパネの配合は、今のところ空振りというほどの外れはありません。この原因を、ソルティビッドとアパパネの競走馬としての性能の差に求めるのは、必ずしも妥当とは言えないでしょう。
例えば、以前にも触れたように、ダービー馬ワグネリアンの母ミスアンコールは、競走馬としては凡庸でしたが、すでに名繁殖牝馬としての地位を固めつつあります。しかし、ミスアンコールの母ブロードアピールは、競走馬としては重賞6勝の大活躍でしたが、繁殖牝馬としては失敗に終わりました(競争成績の水準に見合っていないという意味で)。
それでは、キングカメハメハ×ソルティビッドと、ディープ×アパパネの繁殖成績の差を、どのように考えるべきかということになりますが、やはり、成功しやすい配合としてパターン化することが出来るかどうかだと思います。
(1)で見たように、そもそも、ディープ×母父キングカメハメハ自体が成功しやすいニックスなのですが、(3)で触れたように、そのニックスに頼らなくても、ディープ×ミスプロ×ニジンスキーの血の活用という別の成功パターンにも当てはまっています。
結果として、ディープ×アパパネは、何度やっても空振りしない配合と言うことが出来るわけです。
あとは、大物が出るかどうかですが、ラインベックにはクラシックでの活躍を期待したいですね(ジナンボーの成長にも密かに期待しています)。

https://umatokuimg.hochi.co.jp/horseimages/2017/2017105194/2017105194_201904151830442.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
モクレレやジナンボーもそうですが、ディープよりは、キングカメハメハに似た馬体です。
ただ、アパパネにも似ていた2頭の全兄に対して、ラインベックには、あまりアパパネの要素が無く、その代わりに、多少なりともディープの要素が含まれているように思います。
なお、アルジャンナもそうですが、ラインベックの画像も、出来の悪いものが出回っています。ただ、その原因は、ラインベックがきちんとポーズを取れなかったことにあるようで、各社ともほぼ全滅状態です。ここにリンクした画像は、比較的ましな報知新聞のものですが、一番ちゃんと撮れているのは、「競馬王のPOG」に掲載されている画像でしょう。
今年のディープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牡馬の3位に取りあげました。

モクレレ
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2016/assets_c/2016/06/mokulele-thumb-500x350-131849.jpg
ジナンボー
https://umatokuimg.hochi.co.jp/horseimages/2015/2015104665/2015104665_201705031758487.jpg

アパパネ
https://www.keibado.ne.jp/keibabook/100412/photo02.html

キングカメハメハ
https://livedoor.blogimg.jp/keiba100bai/imgs/0/5/05d4a195.jpg
ディープインパクト
https://livedoor.4.blogimg.jp/jrdbjp/imgs/2/e/2e0bbb10.gif

最後に、今後の展望について。
中京での2戦は、相手関係に問題があるので、アルジャンナ同様、東京スポーツ杯2歳Sは、試金石となる一戦でしょう。
あくまで個人的な見方ですが、アルジャンナとラインベックのどちらが先を行っているのかは、来春のクラシックを占う上で、大きなポイントになると思っています。勝てば、クラシックの有力候補ですし、負けたとしても、それほど差をつけられなければ、巻き返しは充分に可能でしょう。見逃せない一戦ですね。

熱中症気味?

明日の東京スポーツ杯2歳Sにディープ産駒が3頭も出走を予定していますので、取りあげておくことにしましょう。
まず、アルジャンナから。

https://www.youtube.com/watch?v=ilqzZiY-918
https://db.netkeiba.com/race/201909040205/

POGではかなりの人気が予想されていましたが、直前になってオーナー交代という事態が発生したため、新馬戦開始までが締切のルールのPOGでは、指名が伸び悩んだようです。しかし、入厩後に好時計を連発すると、後出しオーケイのメディア系POGでは指名数が急増、netkeibaでは現時点で全体3位、ディープ牡馬産駒に限れば、堂々のトップに躍り出ました。
しかし、ここで第2のアクシデントとして、デビュー予定の小倉の新馬戦で、確率は低かったのですが、まさかの除外となり、いったん仕切り直しとなります。
改めて、阪神開幕週でのデビューとなりましたが、今度は他陣営が怖れをなして逃げ出し、レース成立ぎりぎりの5頭立てとなってしまいました。レース内容も、最後は流しての完勝でしたが、このメンバー構成ならば、リアアメリアのデビュー戦のような圧勝を期待した向きもあったでしょう。その点については、レース後すぐには明らかにされなかったのですが、2ヶ月くらい経ってから、「初戦は熱中症気味で持てる能力を発揮できなかった」というコメントが池江師から出されました。小倉デビューが延期になり、更にここも回避ということでは、今後のスケジュールが大幅に狂いますし、このメンバー構成なら負けることはないだろうということもあって、出走に踏み切ったものと思われます。
というわけで、ここまでの道のりは順調とは言い難いものでしたし、実際のところ、どれほどの能力があるのかも判然とせず、今回の東京スポーツ杯2歳Sが、試金石の一戦となるでしょう。デビュー前の調教では好時計を連発していたアルジャンナですが、一転して今回は控えめな調教に終始し、テンションが上がらないことに重点を置いているようです。このメンバーを相手に勝つようなら、前評判どおりのクラシック候補ということになりますが、さてどうなるでしょうか。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001237526/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきます。
母コンドコマンドは、米8戦5勝。米G1・スピナウェイS(ダート7F、2歳牝馬限定)では、衝撃の13馬身半差の圧勝劇を披露しました。産駒は、アルジャンナが初仔。
祖母イヤーリーリポートは、米G2を3勝しています。
5代母フィスカルファンは、自身は未出走でしたが、4分の3弟のアゲイントゥモローが、伊2000ギニー(現在はG3まで降格されていますが、当時はれっきとしたG1でした)に勝っています。
母系は、ラムタラ、ボスシャラム、シーロなどを出した、スタチュート牝系。1980年代後半に急にブレイクしましたが、それ以前は平凡な系統でした。日本では、重賞勝ち馬は出ているのですが、まだG1馬は出ていません。

(1)母父ティズワンダフル
ティズワンダフルは、種牡馬としては、コンドコマンドを出しただけの一発屋でしたが、ディープ産駒の母父としては、なかなか興味深い配合です。

ティズワンダフル(アルジャンナの母父)
https://www.jbis.or.jp/horse/0001031113/pedigree/

ティズワンダフルの母父ヘネシーは、ストームキャット産駒ですから、ディープ×ティズワンダフルの配合は、望田潤氏の指摘されている、ディープ×ストームキャット×ウォーレリックの成功パターンに当てはまっています。アルジャンナの母コンドコマンドには、エイトサーティの血があるので、ティズワンダフルの持つ、ウォーレリックエイトサーティの相似クロスを継続していることになります。
また、ティズワンダフルには、リファールの血があるので、アルジャンナとしては、リファール4×6のクロスとなります。さらに、ティズワンダフルには、ミスプロの血もあるので、リファールのクロスが重苦しくなることもないでしょう。
それに加えて、ヘネシーの母父父母アービネラは、ディープの祖母バークレアと組み合わせのクロス(ドナテロ、ハイぺリオン+ローズレッド、フェアトライアル~サンインロー、テディが共通)をなします。
ディープ産駒の母父としてのティズワンダフルは、1頭で多くの成功パターンを兼備する注目すべき配合と言えるでしょう。

マイグッドネス(ダノンキグリーの母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0001157818/pedigree/
フォークロア(コントレイルの祖母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000906032/pedigree/

ティズワンダフルの配合は、ダノンキグリーの母マイグッドネスや、同じく明日の東京スポーツ杯2歳Sに出走予定のコントレイルの祖母フォークロアと共通点が多いことも要注目です。
マイグッドネスとは、ストームキャット、リローンチ、リファール、レイズアネイティヴが共通、フォークロアとは、ティズナウ、ストームキャット、ミスプロが共通しています。
同じような配合パターンの成功例が続いているということは、それだけ再現性が高いと言えそうですね。

(2)コンドコマンドの配合
母コンドコマンドの配合の特徴としては、騒々しさを感じるほどの多重クロスが指摘できそうです。

コンドコマンド
https://www.jbis.or.jp/horse/0001222386/pedigree/

パッと目につくのは、シアトルスルー5×3・5のクロスですが、レイズアネイティヴ5×5(あるいは、ミスプロ≒アリダー4×4)のクロスや、ノーザンダンサー6・6・6×6・5・6のクロス(合計6本です)も強力です。ノーザンダンサー絡みでは、ストームバード≒ニジンスキー5×5の相似クロスと見なすことも可能でしょう。この相似クロスは、ラキシス&サトノアラジン姉弟の母マジックストームで有名ですね(ストームバード≒ニジンスキー2×4)。
こうした多彩なクロスが、コンドコマンドの配合的な活力となっているのは明白ですが、アルジャンナとして考えると、5代まではアウトクロス、6代までだと、リファール4×6、ポカホンタスリヴァーレディ6×7・6といった薄めのクロスが確認できます。
クロスのうるさいコンドコマンドに対して、適度に距離を取ってクロスのやかましさを緩和しつつ、まったくのアウトクロスにはしないという、よく考えられた配合です。また、ディープという種牡馬は、クロスのきつい繁殖牝馬を得意としているので、母馬のクロスの活力を上手く引き出すことが期待できるでしょう。

タピッツフライ(グランアレグリアの母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0001115215/pedigree/

コンドコマンドの配合を見て思い浮かんだのは、グランアレグリアの母タピッツフライです。シアトルスルーは1本しかありませんが、ボールドルーラー7・6・7×6やラウンドテーブル≒モナーキー7・6×5(コンドコマンドでは、ラウンドテーブル≒モナーキー8・6×6・8)があり、、ミスプロ4・5×5、ニジンスキー6・4×4(ノーザンダンサー7・5×5)など、やはりクロスが騒々しいタイプで、クロスの種類も、コンドコマンドと類似しています。
こうしたタイプの繁殖牝馬は、やはりディープと合うということですね。
アルジャンナとグランアレグリアということでも、バークレア絡みの組み合わせのクロス(アルジャンナはアービネラ、グランアレグリアはオリオール)や、フェオラ(ディープの6代母、オリオール&ラウンドテーブルモナーキーの祖母)の多重クロスといった共通点があります。
なお、ディープとシアトルスルーの相性が悪いといった大昔の情報を、いまだに信じているかたがいらっしゃるようですが、古くなってしまったPOGネタは、きちんとアップデートしておきましょう。

(3)まとめ
アルジャンナの配合は、ディープ×ストームキャット×ウォーレリックや、リファールのクロスといった成功パターンをベースに、母コンドコマンドのクロスの活力を取り込んだ配合です。
以前、ダノンキングリーを扱ったさいにも触れたのですが、ディープ×ストームキャットは外回り向き、リファールのクロスは内回り向きという、相反する要素が同居する場合、どちらが強く出るかは、慎重に見きわめる必要があります。ダノンキングリーの場合、いまだに二刀流を継続している感じですが、アルジャンナがどうなるかも要注目でしょう。
それはともかく、アルジャンナの配合は、数多くの成功パターンを含み、(1)や(2)で見たとおり、再現性も高そうです。しいて問題点を指摘するなら、母馬のクロスのきつさは、気性のうるささとして産駒に遺伝する可能性があるので、そのあたりは気を付けたいところですね。

https://i.daily.jp/horse/toranomaki1/2019/05/03/Images/d_12296914.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
母馬のシアトルスルーの影響からでしょうか、じゅうぶんな胴伸びがあり、いかにも見栄えのする好馬体です。
以前にもちょっと触れたと思うのですが、POG本などでは、あまり写りのよくない画像が掲載されているケースが目につき、この馬のことを寸の詰まったがっちりした体型と誤解されているかたもおられるようです。しかし、これはカメラマンのポジション取りの問題で、悪い例としてリンクした画像は、馬の斜め後ろから撮影せざるをえなくなった(=ポジション取りに失敗した)ため、胴の寸が詰まって見えてしまうというわけですね(合同取材という現状では、大勢のカメラマンが1頭の馬に群がることになるので、撮影側の技量ということよりも、運の良し悪しという側面が大きいのでしょうが)。
今年のディープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牡馬の1位に推しました。

最後に、今後の展望について。
デビュー前の調教時計は、夏場のディープ産駒の2歳馬としては、かつてお目にかかったことのない水準のもので、取材陣が騒然となったのもうなづけるところです。
抜群の好馬体からも、その素質の高さは疑いようがないと思いますが、あとは、今回のメンバー相手にどうのようなレースを見せてくれるかでしょう。楽勝するようなら、一躍、クラシック戦線の中心となりますが、気性の難しさを見せるようだと、グランアレグリアと似たような問題が生じてきます。どちらに転ぶのか、その中間は無さそうだと考えているのですが、もちろん、前者であることを期待しています。

オークス馬の全妹

明日のデイリー杯2歳Sには、もう1頭、ライティアも出走を予定していますので、こちらも取りあげておきましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=d50HybbJJOo
https://db.netkeiba.com/race/201909040505/

牝馬限定戦ということもあり、オークス馬シンハライトの全妹というネームバリューから、一本被りの人気を集めました。スタートすると後方に控え、4角では大外を回す形になりましたが、直線に向くと危な気なく抜け出して、新馬勝ちを収めています。
とりたてて強力な相手もいなかったので、この1走だけでは何とも言えませんが、2戦目にデイリー杯2歳Sを選んだのは、期待の大きさの表れでしょう。
レース内容は申し分なかったと思いますが、やはり、418キロという馬体重は気になります。姉のシンハライトも小柄な馬でしたが、妹のほうは、測尺的に更に小さいので、今後の馬体の成長がカギとなってくるでしょう。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001231743/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきます。
母シンハリーズは、米G1・デルマーオークス(芝9F)に勝ちました。繁殖牝馬としても優秀で、ライティアの全兄アダムスピークは、ラジオNIKKEI賞2歳Sに勝ち、全姉シンハライトは、オークスに勝ちました。他の種牡馬の産駒でも、、ゼンノロブロイの仔の半姉リラバティが、重賞に勝っています。
祖母ベイズは、米英24戦5勝。シンハリーズ以外の産駒としては、シンハリーズの全弟キングエドワードが、G2で2着1回3着1回とまずまずの成績を残しています。
母系は、ハイペリオン、サートリストラム、リナミックスなどの出た、名門ゴンドレット牝系。ただ、日本では、それほど活躍馬は多くなく、G1馬は、シンハライトだけのようです。ディープ産駒では、仏1000ギニー馬ビューティパーラーや、ヴィクトリアマイル2着のプリモシーンが、この牝系の出身になります。

(1)ディープ×シングスピール
ディープ×母父シングスピールの配合は、以前からニックス候補として期待していたもので、これまでに7頭がデビューして、7頭すべて中央で勝ち上がり、重賞勝ち馬は2頭、シンハライトがオークスに勝っています。
成績は素晴らしいのですが、いかにもサンプル数が少なく、配合が優れているのか、たんにシンハリーズが繁殖牝馬として優れているだけなのか、判然としません。
シングスピールが、ディープと相性がよいのでは推測する根拠は、シングスピールの祖母がバラードである点にあります。バラードは、20世紀を代表する名繁殖牝馬の1頭で、とくに、ヘイローとの好相性で知られていました。ヘイローは、サンデーの父ですから、当然、サンデー系との相性がよいと考えられます。
さらに、ディープ×バラード一族の配合から、5頭もの重賞勝ち馬(ダノンバラード、フレールジャック、ヴィルシーナ、マーティンボロ、ヴィブロス)が出ており、ヴィルシーナ&ヴィブロス姉妹はG1に勝っています。ディープが、特定の一族との交配でこれほど多くの重賞勝ち馬を出した例は、他にはパシフィックプリンセス一族くらいしか思い付きません。
というわけで、ディープ×シングスピールの配合は、もっと試してほしかったのですが、今となっては仕方ありませんね。

(2)ヘイロー≒サーアイヴァーの継続
母シンハリーズは、ヘイローの血を持っており、ライティアとしては、ヘイロー≒サーアイヴァー3・5×4の相似クロスということになります。
シングスピールの祖父サドラーズウェルズの血の重さを緩和するのにも役に立つでしょう。

(3)まとめ
ライティアの配合は、ディープ×バラード一族の相性のよさをベースに、サドラーズウェルズの底力を重苦しくならない形で付け加えたものです。
全兄姉がともに活躍していますし、妹も新馬勝ちということで、何度やっても外れのない配合でしょう。
そうなると、問題となってくるのは、馬格の無さとということになります。そのあたりを、次の馬体のコーナーで検討してみましょう。

https://umatokuimg.hochi.co.jp/horseimages/2017/2017105354/2017105354_201904111354123.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきます。
コンパクトにまとまった、ディープの牝馬産駒らしい体型でしょう。
全兄アダムスピークは、体型がまったく異なるので、比較する対象は、全姉シンハライトになります。
シンハライトも小柄な馬でしたが、1歳時のクラブ募集のさいの測尺では、さらにライティアのほうが数値的に小さかったようです。デビュー戦の馬体重も、シンハライトが430キロで、ライティアは418キロ。やはり、ウェイトアップは緊急の課題と言わざるをえません。
体型的には、シンハライトは小さいなりに胴伸びがあったのに対し、ライティアはまとまった体型なので、妹のほうは、オークスよりも桜花賞向きだと思われます。

シンハライト(2歳)
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2015/assets_c/2015/09/shinha%20right-thumb-500x348-107499.jpg

最後に、今後の展望について。
デビュー戦は、パッとしないメンバー構成だったので、デイリー杯2歳Sが、試金石の一戦となります。前日のオッズでは、3番人気に推されていますが、紅一点で牡馬をまとめて負かすようだと、前途は一気に開けてきます。負けた場合でも、上位争いが出来れば、充分でしょう。
ただ、目先のことはともかく、来春のクラシックということでは、しつこいようですが、馬体の成長が重要です。この点がどうなるかで、この馬の将来も決まってくるでしょう。

心配な兆候

明日のデイリー杯2歳Sに、レッドベルジュールが出走を予定していますので、取りあげておきましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=s9E1DFqQYS8
https://db.netkeiba.com/race/201909030805/

レッドベルジュールのデビュー戦で注目されていたのは、シルヴェリオとリメンバーメモリーのPOGで人気の高かった2頭でした。とくに、シルヴェリオは、今年のPOGでも一二を争う評判馬で、netkeibaでは未だに全体1位の座をキープしつづけています。
レースは、レッドベルジュールが番手につけ、シルヴェリオは中団、リメンバーメモリーは最後方からという展開となりますが、直線を向いてもいっこうに伸びないシルヴェリオとリメンバーメモリーを尻目に、逃げたメイショウボサツとレッドベルジュールの一騎討ちとなり、後続を引き離した叩き合いの末、レッドベルジュールが首差で接戦を制し、デビュー勝ちを収めました。シルヴェリオは、離された4着、リメンバーメモリーは、ブービーの8着に終わっています。
レッドベルジュールは、メイショウボサツにかなり抵抗されましたが、あちらは3キロ軽い減量騎手で、おまけにスローの単騎逃げと展開にも恵まれてのものなので、まずは完勝と言ってよいでしょう。
レース後は、いったん休養を挟んで、アイビーSに向かう予定だったのですが、帰厩後、どうも息遣いが芳しくないことから検査をしたところ、喉鳴りの兆候が見られることが判明しました。このため、アイビーSを回避、目標をデイリー杯2歳Sに切り替えましたが、今はまだそれほどではないもの、将来的には手術となる可能性が高いようです。おそらく、デイリー杯の勝敗に関係なく、レース後は休養→手術となるのでないでしょうか。素質の高い馬なので、残念ではあるのですが、手術を乗り越えて大成したダイワメジャーのような例もあるので、諦めずに頑張ってほしいと思います。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001236815/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母レッドファンタジアは、9戦未勝利。産駒は、本馬の上にレッドベルローズ(13戦3勝、現役)&レッドベルディエス(6戦3勝、現役)の2頭の全姉がおり、1歳下に全弟、2歳下に父ハーツクライの半弟がいます。
祖母キャットチャットは、米7戦3勝。ダートのG2に勝ちました。産駒は、インランジェリーが、米G1に勝っています。インランジェリーは、レッドファンタジアとは4分の3同血の姉で、こちらも日本に輸入されています。
3代母フォンチャッターは、米15戦5勝。ダートG1を2勝しました。
5代母フープラーは、米35戦7勝。産駒から、G1勝ち馬が出ています。
母系は、タピット、リローンチ、サマーバードなどが出た、ブラックブロウケイド牝系。日本では、まだこれといった大物は出ていません。

(1)ディープ×アンブライドルズソング
ディープ×母父アンブライドルズソングは、有名なニックスで、これまでに20頭がデビューして、18頭が勝ち上がり(全て中央)、ダノンプラチナがG1勝ち。未勝利の2頭のうちの1頭は、デビューしたばかりでキャリア1戦の2歳馬なので、まだまだこれからでしょう。
とくに、今年は、レッドベルジュールを皮切りに、ブレッシングレイン、コントレイル、ルナシオンと次々に勝ち上がっており、ちょっとした当たり年になりそうな勢いです。

(2)ディープ×アンブライドルズソング×ストームキャット
ニックスといえば、ディープ×ストームキャットも有名ですが、この2つのニックスを掛け合わせた、ディープ×アンブライドルズソング×ストームキャットのパターンも徐々に増えてきました。
今年は、レッドベルジュール、ブレッシングレインコントレイルの3頭がデビューして、すべて新馬勝ち。通算でも、8頭がデビューして、8頭すべてが中央で勝ち上がっています。まだ重賞勝ち馬は出ていませんが、要注目の配合パターンでしょう。

(3)ハイインロー関連
レッドベルジュールの配合は、どうしても米血に偏りがちですが、ハイインロー関連での面白いクロスとしては、ヒラリー6×6、または、そのヒラリーのクロスを絡めて、エーデルワイス≒フープラー5×5の相似クロス(ヒラリー、サーギャラ八ッド=ブルドッグ、マンノウォー、ダーバーが共通)があげられるでしょう。

エーデルワイス(サンデーの3代母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000393160/pedigree/
フープラー(レッドベルジュールの5代母)
https://www.jbis.or.jp/horse/0000391810/pedigree/

エーデルワイスを活かしたクロスというと、これまでは、スワップスやフラワーボウルの血を利用したものが殆んどで、ヒラリーを軸にしたフープラーのようなケースは、母レッドファンタジアの産駒を除けば、あまり見かけないものです。しかし、エーデルワイスは、サンデーの配合において重要な位置を占めているので、その血を活用したクロスであれば、それなりの効果を見込んでもよいでしょう。

(4)まとめ
レッドベルジュールの配合は、ディープ×アンブライドルズソングと、ディープ×ストームキャットの2つのニックスを軸にしたもので、(2)で検討したように、再現性の高い配合と言えそうです。
あとは、大物が出るかどうかということですが、個人的には、レッドベルジュールにはかなりの期待をしていました。そこへ、喉鳴り問題が浮上ということで、ちょっと残念な事態となってしまいましたね。なんとか、ディリー杯2歳Sで賞金を加算して、余裕をもって手術へ臨めるとよいのですが。

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引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
ディープ×アンブライドルズソングの配合でよく見かける体型で、基本的には、ディープよりもアンブライドルズソングの影響が強く出ています。
2頭の全姉では、レッドベルディエスのほうに似ており、ダノンプラチナともよく似ています。このニックス配合の出世頭であるダノンプラチナと比較しても、馬体面では甲乙つけがたいレベルでしょう。
レッドベルローズは、かなりストームキャットの影響が出ているので、それほど似ていないようです。
今年のディープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牡馬の10位タイに取りあげました。

レッドベルローズ(2歳)
http://www.tokyo-tc.com/mng_h_img/org_kinkyo_RedFantasia15_11.jpg
レッドベルディエス(2歳)
http://www.tokyo-tc.com/mng_h_img/org_kinkyo_RedFantasia16_11.jpg

ダノンプラチナ(2歳)
http://www.keibado.com/keibabook/141222/photo10.html

ディープインパクト
https://livedoor.4.blogimg.jp/jrdbjp/imgs/2/e/2e0bbb10.gif
アンブライドルズソング
https://www.paulickreport.com/wp-content/uploads/2013/02/unbridleds-song-th.jpg

最後に、今後の展望について。
素質の高さは疑いようがないと思いますが、すべては、喉鳴りの手術の成否にかかっています。現時点では、それ以上のことは何も言えないでしょう。

速報・カンタラS

フィアスインパクトが、豪G1・カンタラS(芝1600m)を制し、先日のトゥーラックHに続き、G1戦2連勝を飾りました。

https://www.youtube.com/watch?v=kdRrk0fJ3CA
https://www.racingpost.com/results/297/flemington/2019-11-02/744055

https://www.jbis.or.jp/horse/0001189921/pedigree/

カンタラSは、オーストラリアの古馬マイル路線のシーズン前半(南半球なので)を締めくくる重要なレースで、同じG1とはいっても、賞金総額ではトゥーラックHの4倍にもなります。1881年創設という、オーストラリアでも屈指の伝統を誇り、事実上、トゥーラックHは、カンタラSのトライアル的な位置付けのレースとなっているのです。
フィアスインパクトは、前走でトゥーラックHに勝っているとはいえ、ハンデに恵まれた側面もあり、3番人気にとどまりました。スタートすると後方に控え、4角ではかなり外を回らされますが、直線では馬群を割って3頭の叩き合いとなり、最後は短頭差で接戦を制し、2つ目のG1勝利となりました。
この勝利は、フィアスインパクトの将来にとっても、大きな意味を持つことになります。正直、G1としては格の低いトゥーラックHに勝っただけでは、引退後の種牡馬入りは微妙でしょう。しかし、トゥーラックHとは比較にならないビッグタイトルでG1戦2勝目となれば、種牡馬入りはほぼ確実です。全弟のケイアイノーテックもG1馬という点も、プラスに働くと思われます。今回の勝利は、自力で運命を大きく切り開いた勝利と言ってよいでしょう。
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