今回は、ディープジュエリーの新馬戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=oBG017Cgcxw
http://db.netkeiba.com/race/201505010405/

先週も出馬投票したものの除外ということで、今週の新馬にまわりました。道中は中団後方につけ、直線はよく伸びて差し切りました。
ただ、出走が1週延びたわりには、馬体は太め残りで、まだまだ良化の余地は大きいと思います。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001156136/pedigree/

では、血統のほうから見ていきましょう。
母ジュエルオブザナイトは、米2戦未勝利。産駒には、アメリカでG1を2勝(芝とダートを1勝ずつ)した、イヴニングジュエルがいます。
3代母エクセレントレディは、競走馬しては平凡な成績でしたが、繁殖牝馬としては大成功をおさめ、ジェネラルチャレンジとノータブルキャリアの2頭のG1馬を出し、他にも、ウエスタンヘミスフィアがG2に勝っています。
4代母ノーザンシーも名繁殖牝馬で、7年連続でアルゼンチンのリーディングサイアーを獲得した、サザンヘイローを出しました。
母系は、ミスワキ、セントニコラスアビー、ホワイトマズルなどの出た、名門オーヴァル牝系。日本では、まだ大物は出ておらず、シンゲンやメイショウオウドウあたりが代表的な活躍馬です。
母父ジャイアンツコーズウェイは、ストームキャット産駒で、現役時代にはG1を9勝しました(全て芝)。種牡馬としても優秀で、北米リーディングサイアーを2度獲得し、芝・ダートどちらも活躍馬が出ています。

(1)母父ジャイアンツコーズウェイ
ディープ×母父ジャイアンツコーズウェイというと、真っ先に思い浮かぶのは、仏1000ギニー馬ビューティパーラーでしょう。

ビューティパーラー
http://www.jbis.or.jp/horse/0001110884/pedigree/

デビューから無傷の4連勝で仏1000ギニーを制し、ディープ産駒初の海外G1タイトルを獲得しました。仏オークスは残念ながら2着に終わりましたが、種牡馬としてのディープの能力の高さを海外に知らしめた功績は大きいでしょう。
ジャイアンツコーズウェイは、ストームキャット産駒ですが、ディープ×母父ストームキャットの相性のよさは、つとに知られています。それでは、母父ストームキャットと母父ジャイアンツコーズウェイとでは、どこらへんが違ってくるのでしょうか。

ストームキャット
http://www.jbis.or.jp/horse/0000337102/pedigree/
ジャイアンツコーズウェイ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000372708/pedigree/

まず、目につくのは、ジャイアンツコーズウェイの母マライアズストームは、ナスルーラ≒ロイヤルチャージャー4・6×5・5・5の4分の3同血クロスで、かなりのスピードタイプ(アメリカで重賞6勝)だと考えられます。ストームキャットには、ナスルーラ関連の血は1本しかなかったので、ジャイアンツコーズウェイは、父よりナスキロ色がかなり濃厚になっています。さらに、ラトロワンヌの血も、1本ですが入っているので、ナスキロラトロの形になっている点も見逃せません。
また、マライアズストームには、ウォーレリックの血があるので、ジャイアンツコーズウェイとしては、エイトサーティ≒ウォーレリック6×6が生じています。望田潤氏によれば、ストームキャットのエイトサーティの血を活用することは、配合上の重要ポイントの1つです。
それから、ストームキャットは、ハイぺリオンの血がきわめて乏しいのですが、ジャイアンツコーズウェイは、母マライアズキャリーにそこそこハイぺリオンの血があります。
ディープとの関連では、ジャイアンツコーズウェイには、ヘイローの血があるので、ディープジュエリーとしては、ヘイロー≒サーアイヴァー3・5×6と継続しています。また、レッドゴッドの血もあるので、ヘイロー≒レッドゴッド3×6・6とも言えます。
そして、ジャイアンツコーズウェイには、ディープと相性のよいバラードの血があるのも、ジャイアンツコーズウェイの特徴の1つでしょう。
こうして比較してみると、ジャイアンツコーズウェイは、ストームキャット以上にディープと相性がよい可能性もあり、ビューティパーラーという大物が出たのも頷けます。
ディープ×母父ジャイアンツコーズウェイは、海外馬も含めて、これまでに6頭がデビューして、4頭が勝ち上がっています。2頭の未勝利馬は、まだ3歳の現役馬ですから、そのうち勝ち上がる可能性もあるでしょう。重賞勝ち馬は、まだビューティパーラーだけですが、その全兄バロッチには、フランスで重賞2着の実績があり、タイセイドリームは、京王杯2歳Sで4着にきたことがあります。

(2)母ジュエルオブザナイトの配合
ジュエルオブザナイトは、すでにG1馬の母となっているわけですから、その配合に注目する必要があるでしょう。

ジュエルオブザナイト
http://www.jbis.or.jp/horse/0000983742/pedigree/

ジュエルオブザナイトの母ジュエルレディは、ナスキロラトロ主体の配合で、ナスルーラ≒ロイヤルチャージャー6・7・6・6×5・6です。ジャイアンツコーズウェイの母マライアズストームにも多量のナスルーラ≒ロイヤルチャージャーの血がありましたから、トータルとして、ジュエルオブザナイトもナスキロラトロ中心の配合と考えてよいでしょう。
また、ジュエルオブザナイトには、ノーザンダンサー4×6・4のクロスもありますが、父ジャイアンツコーズウェイも母ジュエルレディも、大まかには、ノーザンダンサー×ナスキロラトロ配合どうしと見なすことも可能でしょう。したがって、ディープジュエリーは、父母相似配合的と考えることもできそうです(はっきり父母相似配合と言い切れるほど似ているかはともかく)。ディープの母父として、ノーザンダンサー×ナスキロラトロ配合の種牡馬が好相性であることは、当ブログでもしばしば指摘してきましたし、父母相似配合的にまとめたジュエルオブザナイトも、ディープと相性がよいと考えてよいでしょう。
あと、ちょっと面白いのは、ジュエルオブザナイトが、ストームバード≒ニジンスキー3×5の相似クロスを持つ点でしょうか。ラキシスの母マジックストームのように、ストームバード≒ニジンスキー2×3といった極端なものではありませんが、ラキシスがG1に勝っているわけですし、いちおう注目しておくべきでしょう。

(3)まとめ
ジュエルオブザナイトは、ノーザンダンサー×ナスキロラトロと、大量の米国血脈が目立ちますが、意外にハイぺリオンの血にも存在感があります。
例えば、ジュエルオブザナイトには、ヘリオポリス7×8・7のクロスがあるので、ディープジュエリーとしては、ガルフストリーム(サンデーの母母父父)≒オーロラ(ディープの母母母母父ボレアリスの母)≒ヘリオポリス6・7×8・9・8の相似クロス(ハイぺリオン、スウィンフォード、マルコが共通)となっています。ガルフストリーム≒ヘリオポリスのクロスは、サンデー産駒の配合で威力を発揮した有名なパターンです。
また、ジャイアンツコーズウェイにある、スワップスエイミーの血は、サンデーの3代母エーデルワイスと組み合わせのクロス(ハイぺリオン、サンインロー、エクレアが共通)になっています。
ハイぺリオンの血量が多いとは言えませんが、クロスとして有効に活用されているため、血量以上の効果を期待してよいでしょう。

http://db.netkeiba.com/?pid=picture&type=h&id=2012104666

引き続き、馬体のほうも見ていきます。
ネット上には、あまり良い画像がありませんが、POG本などには見やすい画像が載っていますので、お持ちのかたは参照してください。牝馬にしては馬格に恵まれ、ディープ×ストームキャット系の馬に見られるような、がっしりとしていながらも、適度に伸びやかさもある体型でしょう。ディープ産駒の中でも、母父ストームキャット系の馬にしか見かけないような体型です。

パドック動画
https://www.youtube.com/watch?v=598g4h6QBDo

あまり画質はよくないのですが、パドック動画を見ても、牝馬にしては腹回りがしっかりとしており、ちょっと若い頃のキズナを思わせるようなところもあって、やはり、ディープ×ストームキャット系に独特の馬体ですね。

最後に、今後の展望について。
デビューが遅かったため、今から桜花賞路線というのは、ちょっとスケジュール的に厳しいかもしれません。陣営からも、自己条件からオークスのトライアル狙いといった話が出ているようなので、オークス路線ということでよいでしょう。
血統的には期待の大きい馬ですが、デビュー戦の勝ちっぷりは圧倒的と言うほどではなかったのも事実で、一叩きして馬体が絞れて何処までのパフォーマンスが見せられるかということになりそうです。したがって、次走が試金石の一戦になるわけですが、たとえ春に間に合わなくても、秋以降も期待できる馬だと思います。

締めのダイジェスト版。
血統……ディープ×ジャイアンツコーズウェイに注目。
馬体……大柄で、ディープ×ストームキャット系らしい体型。