今回は、フローレスマジックの勝った未勝利戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=m1qRh3CIu5I
http://db.netkeiba.com/race/201605040202/

デビュー戦は、ちぐはぐなレースで逃げ馬を鼻差とらえきれませんでしたが、今回は、ラスト2Fまで持ったままで、軽く追い出しただけで突き放す楽勝でした。
更新が遅れている関係で、3走目のアルテミスSの結果も判っていますが、大幅な馬体重減に悩まされながらも、勝ち馬のリスグラシューを追い詰めての2着でした。リスグラシューは、阪神ジュベナイルフィリーズでも、出遅れながら2着と好走、ソウルスターリングに次ぐ3歳牝馬ナンバー2の地位を固めているだけに、負けて強しといえるアルテミスS2着の価値は高いでしょう。
なお、アルテミスSでの馬体重減を受けて、年内は馬体回復のための休養にあてるという陣営の判断も、大正解だろうと思います。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001185754/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母マジックストームは、アメリカのダートG2(1800m)に勝っています。これまでの産駒は全て父親がディープですが、ラキシスはG1勝ち、サトノアラジンはG2を2勝、出遅れていたサトノケンシロウも強い勝ち方で2連勝中と、まったくハズレ無しの好成績です。
祖母フロッピーダンサーは、マジックストームが代表産駒ですが、その全妹キャットダンサーも、G1馬ドリルを出しました。
4代母ルイアナは、リトルカレント(米2冠馬)やプレイヤーズンプロミセズ(米G1戦2勝)を出した名繁殖牝馬です。
5代母バンケットベルは、米2冠馬シャトーゲイの母。
母系は、シャトーゲイ、リトルカレント、バーバロなどを出した、米国の名門タスカンレッド牝系。クモハタやゴールドシップの出た、日本の星旗牝系も、この母系から出ました。

(1)ストームバード≒ニジンスキー
ラキシスやサトノアラジンを取りあげた時にも指摘しましたが、母マジックストームが名繁殖牝馬たりえた最大の強味は、自身の持つストームバード≒ニジンスキー2×3の相似クロス(ノーザンダンサー、ブルページ、ギャラントフォックス、フェアプレイ、アルティマスが共通)にあると言ってよいでしょう。その証拠に、上述のように、全妹キャットダンサーもG1馬を出しています。マジックストームは、G2に勝った活躍馬ですが、キャットダンサーのほうは、ただの1勝馬にすぎないわけですから、基本的な配合が優れている証拠と考えられます。

マジックストーム(=キャットダンサー)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000719406/pedigree/

また、これも以前に指摘しましたが、ディープは、強めのクロスを持つ繁殖牝馬と相性がよいようです。具体的には、デニムアンドルビー(母馬にヌレイエフ4×2)、スマートロビン(母馬にノーザンダンサー2×3)、ハープスター(母馬にノーザンダンサー3×3)、ミッキーアイル(母馬にノーザンダンサー4・4×3)、ヴィルシーナ(母馬にヘイロー≒レッドゴッド3×4・4)、サトノダイヤモンド(母馬にヘイロー3×4)、ジェンティルドンナ&ドナウブルー(母馬にノーザンダンサー3×4)、トーセンラー&スピルバーグ(母馬にグフト4×4)、スマートレイアー(母馬にリファール3×4)、レッドオーヴァル(母馬にスマーテア4×3)など、あまり珍しくないノーザンダンサーのクロスはともかく、多くの成功例が見られます。

(2)サーアイヴァーとターリングアとセキロ
望田潤氏によると、ディープとファピアノ~アンブライドルド~アンブライドルズソングの相性がよいのは、ディープの持つサーアイヴァーの血と、ファピアノの3代母セキロの配合が似ているからだそうです(マームード、プリンスキロ、マンノウォー、サーギャラハッド=マルグリットドヴァロワが共通)。

サーアイヴァー
http://www.jbis.or.jp/horse/0000333957/pedigree/
ターリングア
http://www.jbis.or.jp/horse/0000393602/pedigree/
セキロ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000391086/pedigree/

この望田説にそって考えるなら、ストームキャットの母ターリングアもよく似た配合なので、フローレスマジックとしては、サーアイヴァーとターリングアとセキロの組み合わせのクロス(マームード≒マムタズビガム、プリンスキロ、マンノウォー、サーギャラハッド=マルグリットドヴァロワが共通)が生じていることになります。
ここで思い当たるのは、マジックストームの全妹キャットダンサーの出したG1馬ドリルの配合です。

ドリル
http://www.jbis.or.jp/horse/0001148262/pedigree/
ロードゲイロード
http://www.jbis.or.jp/horse/0000335914/pedigree/

ドリルの父母父父ロードゲイロードは、セキロの近親(セキロの祖母とロードゲイロードの3代母が同じ馬)で、配合にも共通性が見られます。したがって、ロードゲイロードとターリングアとセキロは、組み合わせのクロスの関係にあるわけです。
ドリルとフローレスマジック(=ラキシス&サトノアラジン)に同じようなクロスが生じていることは、おそらく偶然ではないでしょう。ディープ×ストームキャット×ファピアノ系の配合は、マジックストーム産駒以外でも、要注意のパターンと言えそうです。

(3)まとめ
ラキシス、サトノアラジン、サトノケンシロウに続き、フローレスマジックまでもが活躍したということで、ディープ×マジックストームの配合は、単なるディープとストームキャットのニックスといったレベルを超えた、抜群の好相性であることが明確になりました。
この配合の唯一の問題点は、本格化までに時間がかかるということでしたが、フローレスマジックは、すでに2歳の時点で同世代の牝馬の中でもトップクラスの素質を見せています。
今後の注目点としては、このままクラシックでも好走するのか、やっぱり本格化は秋以降なのか、ということでしょう。今年の3歳牝馬戦線は、ハイレベルな戦いが予想されるので、フローレスマジックの成長曲線がどのようなものになるのかが、重要なポイントになりそうです。

2歳
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2016/assets_c/2016/07/6ffdad31eb6538a766848956e7a57caaf948d076-thumb-500xauto-166885.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
ディープの牝馬産駒らしいシルエットですが、やはりパワフルさを感じさせるのは、母マジックストームの影響でしょうか。
ラキシスやサトノアラジンに較べると、まとまりのよい体型ですが、サトノケンシロウほどコンパクトではないので、大きすぎず小さすぎず、バランスのよい馬体です。
今年シーズンのディープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牝馬の2位に取りあげました。

ラキシス(2歳)
https://livedoor.blogimg.jp/umajin_pog/imgs/6/e/6e6dcb19.jpg
サトノアラジン(2歳)
http://www.jbis.or.jp/horse/images/0001137571_3/
サトノケンシロウ(2歳)
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2016/assets_c/2016/01/satono%20kenshiro-thumb-500x377-116136.jpg