今回は、レッドルチアの勝ち上がった新馬戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=ruiyiVBBDMw
http://db.netkeiba.com/race/201605040604/

レッドルチアとアルミレーナの2頭のディープ産駒が人気を分け、直線でも2頭が後続を引き離しての叩き合いとなりましたが、最後はレッドルチアが半馬身差で勝利を収めました。18頭フルゲートの大外枠でしたが、好スタートから中団につけ、上がり33秒8の末脚を披露しています。
レース内容は申し分なかったのですが、問題は、410キロの馬体重でしょう。全兄のレッドセインツ&レッドライジェルも馬格に恵まれませんでしたが、レッドルチアは牝馬ということで、さらにもう一回り小さいですね。馬体重を増やしていけるかが、今後の大きな課題となりそうです。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001190654/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母サセッティは、英5戦未勝利。産駒は、レッドルチアの2頭の全兄のレッドセインツ(15戦3勝、新潟2歳S3着)とレッドライジェル(16戦4勝、現役)や、半姉レッドセシリア(20戦5勝、阪神ジュベナイルフィリーズ3着)などがいます。
祖母マイポターズは、愛10戦1勝。産駒から、愛オークス馬ウィノナが出ました。
3代母マイビューパーズは、自身は未勝利に終わりましたが、産駒から2頭の重賞勝ち馬を出し、孫の代ではG1馬が2頭も出ました。日本では、ハーツクライの3代母として有名です。
母系は、米国の中堅どころの、ボナヴィア牝系。かつては全くパッとしない系統で、活躍馬が出るようになったのは、マイビューパーズの母プリンセスリヴォークトあたりからでしょうか。日本では、ハーツクライやミッキーアイルが出ました。

(1)一族の活躍馬との比較
マイビューパーズ一族の活躍馬を比較対照してみると、いくつかのパターンが浮かび上がってくるようです。

ミッキーアイル
http://www.jbis.or.jp/horse/0001141719/pedigree/
ウィノナ(愛オークス)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000444465/pedigree/
ハーツクライ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000722158/pedigree/
リファーズスペシャル(輸入種牡馬)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000333796/pedigree/

まず、ミッキーアイルの配合で目につくのは、ノーサードチャンスリヴォークト5×7(ブルーラークスパー、サーギャラハッド、ハイタイムが共通)と、ポカホンタスリヴァーレディ5×5(プリンスキロ、ローマンが共通)の相似クロスでしょうか
レッドルチアにも、ノーサードチャンス≒リヴォークト5×5ポカホンタス≒リヴァーレディ5×5のクロスがあります。
ウィノナの父アルザオは、ディープの母父であり、配合的には、ポカホンタス≒リヴァーレディ3×4のクロスが目立ちますね。
ハーツクライには、アルザオの父であるリファールの血があり、配合的には、ノーサードチャンス≒リヴォークト4×5のクロスがあります。
リファーズスペシャルは、ジェンティルドンナの母母父ですが、父がリファールで、ジェンティルドンナには、ノーサードチャンス≒リヴォークト5×6のクロスがあります。
以上をまとめると、大きな共通点として、リファールノーサードチャンス≒リヴォークトの相似クロス、ポカホンタス≒リヴァーレディの相似クロスの3点が注目されますが、レッドルチアには3つとも揃っています。
リファールについては、やはり、ウィノナの父がアルザオであるという点は示唆的です。ハーツクライやミッキーアイル、リファーズスペシャルなどの成功例もあり、この一族とリファールとの本質的な相性のよさが窺えます。
ノーサードチャンス≒リヴォークトの相似クロスは、もともとはサンデー産駒で成功した配合で、ハーツクライ、サイレンススズカ、ハットトリックなどが出ました。ディープ産駒でも、ジェンティルドンナ&ドナウブルー、ミッキーアイルなどが出ています
ポカホンタス≒リヴァーレディのクロスは、ふつうはリヴァーマン絡みで発生するものですが、たとえば、ミッキーアイルやフィエロ(マイビューパーズ一族ではありませんが)にリヴァーマンの血は無いにもかかわらず、それでもポカホンタス≒リヴァーレディのクロスが生じており、ディープ産駒における成功例は多いです(ディープブリランテ、ミッキーアイル、マリアライト、ミッキークイーン、ショウナンアデラ、タッチングスピーチ、アキヒロ、フィエロなど)。

(2)ハイインローの要素
成長力という観点からすると、ハイペリオンの血は欠かせないところですが、レッドルチアの母サセッティの場合、おもに父父セルカークに含まれており、単に含まれるだけはでなく、ディープ側と組み合わせのクロスを生じる形になっていて、より効果的であると言えるでしょう。

マウンテンフラワー(サンデーの祖母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000393161/pedigree/
ハイライト(ディープの4代母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000390923/pedigree/
シャーペンアップ(セルカークの父)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000336086/pedigree/

マウンテンフラワー&ハイライト&シャーペンアップは、ハイペリオンのクロス、サンインロー、アロペ(ディープの8代母)、テディ、スウィンフォード、マルコが共通する組み合わせのクロスになりますが、特に、ディープの母系の血(アロペ)を含んでいるところがポイントです。

(3)ヘイロー≒レッドゴッドとレディレベッカ≒リヴァーマン
レッドルチアには、ヘイロー≒レッドゴッド3×6の相似クロスがあります。このクロスは内回り向きですが、レッドルチアのデビュー戦にしても、2頭の全兄の戦績からしても、末脚の切れ味を活かす外回り向きのタイプのように思われます。
そうだとすると、その末脚の配合的根拠は何処にあるのでしょうか。

レディレベッカ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000394467/pedigree/
リヴァーマン
http://www.jbis.or.jp/horse/0000335664/pedigree/

望田潤氏によると、アルザオの母レディレベッカと、サセッティの母父父リヴァーマンとの間には、相似クロスが生じているとのことです(レッドルチアの場合、レディレベッカ≒リヴァーマン4×4)。共通するのは、ロイヤルチャージャー≒ナスルーラ、プリンスキロ、ローマン、マンノウォーなどです。
自分が知る限りでは、レディレベッカ≒リヴァーマンと考える研究者は望田氏だけですが、似たような例としては、ミッキークイーンのケースがあげられるでしょう。

ミッキークイーン
http://www.jbis.or.jp/horse/0001156953/pedigree/

ミッキークイーンにも、ヘイロー≒レッドゴッド3×5のクロスがありますが、タイプとしては、外回り向きの差し馬でしょう。そして、ミッキークイーンにも、レディレベッカ≒リヴァーマン4×6のクロスがあるわけです。
レディレベッカもリヴァーマンも、典型的なナスキロ配合ですから、レッドルチアとその全兄たちやミッキークイーンの末脚の根拠と考えることが出来そうです。
しかし、ヘイロー≒レッドゴッドの内回り向きの要素が、まったく表に出ていないかといえば、そうとは限らないかもしれません。ミッキークイーンの秋華賞のレースぶりや、レッドライジェルが中山コースも得意としているのは、ヘイロー≒レッドゴッドのクロスのおかげと考えられるでしょう。レッドルチアも、内回りのレースに出ることもあるでしょうが、意外な巧者ぶりを発揮する可能性があることは、念頭に置いておくべきかもしれませんね。

(4)まとめ
レッドルチアの配合は、ハーツクライやミッキーアイルを出したマイビューパーズ一族の成功パターンを踏襲したものです。全兄レッドセインツ&レッドライジェルもそこそこ走っているように、非常に成功しやすい配合と言えるでしょう。
ただ、血統表の印象は、いくらか地味さを感じさせるのも事実で、コンスタントに走るけれど、大物が出るかどうかは運次第といった配合でしょうか。
ちなみに、確実性より一発大物を狙うなら、サセッティの場合、やはりハーツクライということになるでしょう。すでに、レッドセシリアがいますが、マイビューパーズ4×3は実に魅力的で、是非もう1回くらい試してほしいと思います。

http://www.tokyo-tc.com/mng_h_img/org_kinkyo_Sasetti14_19.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
いかにもディープの牝馬産駒らしいシャープな体型ですね。全兄2頭とも似ているのですが、牝馬なので線の細い面があると思います。
今シーズンのディープの2歳産駒の馬体評価リストでは、あまりに馬体が小さいため選外としたものの、シルエット的には見どころがあったので、ウエイトアップすれば期待できる牝馬3頭の内の1頭として取りあげました。

レッドセインツ(2歳)
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/63/fd7c94067b63d3fd74acb7337b46ed89.jpg
レッドライジェル(2歳)
http://www.tokyo-tc.com/mng_h_img/org_kinkyo_Sasetti12_11.jpg

最後に、今後の展望について。
同じディープ産駒のアルミレーナとの叩き合いを制した新馬戦の内容は、よかったと思います。
血統的にも筋が通っていますし、やはり最大の問題は、馬体重ということに尽きるでしょう。
管囲が太い(20.8センチ)ので、もうすこし筋肉がついてくれば、あと10キロくらいは増えてくれるのではと期待しています。
この馬の将来は、1にも2にもウエイトアップ出来るかどうかにかかっていると思います。