今回は、アルアインの勝った新馬戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=06qj2UalUZU
http://db.netkeiba.com/race/201608040805/

ムーア騎手を背に1番人気に推され、レースも中団から危なげなく差し切りました。
POGでも人気の高かった馬ですが、池江師がデビュー前からマイル路線を示唆したことは注目されます。更新が遅れている関係で、次走および次々走の結果も判っていますが、2戦目の千両賞は快勝、3戦目のシンザン記念は内で詰まって6着でした。
まあ、不利のあったシンザン記念は度外視してもよいと思いますが、その次のレースとしてアナウンスされたのは、スプリングSでした。結果次第で皐月賞挑戦に含みを持たせた選択だと思いますが、デビュー前の予定通りにマイル路線を進むのか、場合によってはクラシック路線に切り替えるのか、スプリングSの内容によって決まってきそうですね。

本編とは関係の無い、ちょっとしたお知らせなのですが、YouTubeにて、レース動画のアップロードを行なっていたアカウントが次々に停止され、大量のレース動画が削除されているようです。その影響で、当サイトからの動画リンクも、かなりの数が切れてしまっている状態です(とくに、新馬戦および未勝利戦は殆んど)。
今後の動向を見ながら、リンクの貼り直しなどの作業を行なっていきたいと思いますが、とうぶん予断を許さない状況のように思われます。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001191607/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母ドバイマジェスティは、米G1・ブリーダーズCフィリー&メアスプリント(ダート7F)に勝つなど、34戦12勝。アルアインの1つ上の全姉ジュベルアリは、未出走のまま繁殖にあがりました。
5代母サラセンミスは、自身の産駒にこれといった活躍馬はいませんが、全妹サラセンファーストとともに、この系統の主流派を形成し、勢力を拡大しました。
母系は、米国の中堅どころの、ナイツギャル牝系。ムタファーウエク、マニスティーク、サムロマンスなどが出ています。日本には、あまり入ってきていない系統のようです。

(1)母父エーピーインディ系
ディープ×エーピーインディ系の配合というと、今のところ、ハートレーくらいしか活躍馬が出ていません。

ハートレー
http://www.jbis.or.jp/horse/0001175214/pedigree/

ハートレーの母父コングラッツと、アルアインの母父父プルピットは、いずれも、エーピーインディ×母父ミスタープロスペクターの配合です。
また、ハートレーの母ウィキッドリーパーフェクトと、アルアインの母ドバイマジェスティは、どちらもナスキロラトロと米国血脈が主体の配合である点も似ています。
体型的にも、シアトルスルー(エーピーインディの父)由来の胴長な馬体であることも類似点でしょう。
違いとして目につくのは、ウィキッドリーパーフェクトには、ノーザンダンサー4×5のクロスがあるのに対し、ドバイマジェスティには、ノーザンダンサーの血が薄く1本あるだけということでしょう。この違いは、おそらく成長曲線に影響を与えるのではないかと思われます。ウィキッドリーパーフェクトは、2歳時にG1に勝ちましたが、ドバイマジェスティは、初重賞は古馬になってからで、G1に勝ったのは5歳時でした。
ドバイマジェスティの血統は、スピード+馬力の外回り向きの配合ですが、馬体に芯が通るのには時間がかかり、息子のアルアインも、もしかしたら本領発揮は古馬になってからという可能性もありそうです。

(2)まとめ
アルアインの配合は、ハートレーと較べても、ハイペリオンの要素が薄く、重賞には手が届いても、G1となると難しい面があります。
ハイペリオンの薄いディープ産駒のG1馬というと、リアルインパクトがいますが、配合的には、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×4・5のクロスに全てを託したような、ギャンブル性の高いものだったかもしれません。
リアルインパクトの場合は、たまたまクロスが威力を発揮しましたが、アルアインは、5代までクロスの無いアウトブリード配合で、母ドバイマジェスティも5代までクロスがありません。
もっとも目立つクロスは、サーゲイロード≒セクレタリアト6×6・7の兄弟クロスで、全体的にもナスキロ色の強い配合ですから、外回り向きのストライドの大きい末脚が武器となりそうです。
ナスキロ主体という方向性は明確なものの、クロスは薄いものしかなく、ややパンチに欠ける配合かもしれません。

2歳
http://p.nikkansports.com/goku-uma/photo/news/00000001/2016/04/06/1627652-1.jpg

引き続き、馬体のほうも見ておきましょう。
先ほども少し触れたように、シアトルスルーの血の影響の強い胴長体型です。胴伸びはあるものの、ステイヤー的な胴の長さではなく、1600~2000mくらいに向いた体型でしょう。
ディープ産駒にしては、立派なトモをしており、末脚には威力がありそうです。

ハートレー(2歳)
http://uma-jin.net/pc/images/pc_pog_column_100323.jpg

プルピット(アルアインの母父父)
http://www.sporthorse-data.com/horse/10010103/103/Horse_Pulpit-big.jpg
エーピーインディ(アルアインの母父父父&ハートレーの母父父)
http://www.drf.com/sites/default/files/u77/apindygilbert.jpg

最後に、今後の展望について。
デビュー2連勝の内容を見ても、好素材であることは疑いようがありません。しかし、500キロオーバーの大型馬で、現状ではナスキロ的な緩さの残るのも事実です。
馬体に芯が通ってくれば、重賞でも活躍できると思いますが、成長曲線はゆっくりめの可能性も考えておくべきでしょう。
血統的には、大きなセールスポイントに欠けるので、雄大な馬体を活かして、フィジカル面での素質を伸ばしていくべきだと思います。
距離的には、マイラーと決めつける必要はないでしょう。2000mくらいまでなら、充分にこなせそうな馬体だと思います。