今回は、ジナンボーの新馬戦勝ちを取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=Om1wifMZKWo
http://db.netkeiba.com/race/201705030405/

好スタートから2番手につけると、直線は軽く気合いをつけただけで、ノーステッキの完勝でした。この時期からビシビシ仕上げられているはずもなく、すべてが余裕残しの理想的なデビュー戦だったと言えるでしょう。
ディープ×アパパネの3冠配合としては2頭目のデビューとなりましたが、初仔のモクレレは、骨折など不運な面もあったとはいえ、現時点で未勝利ということで、POG的に微妙な雰囲気があったのも事実です。しかし、そうした不安を払拭する見事な勝ちっぷりでした。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001206622/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母アパパネは、牝馬3冠などG1戦5勝。モクレレが初仔で、ジナンボーが馬名どおりの2番仔です。
祖母ソルティビットは、オープン特別を2勝して、フェアリーSは2着。産駒は、アパパネが大活躍したものの、それ以外はパッとしないようです。アパパネの全姉は未出走(馬名登録もされませんでした)、全弟ウラレナは9戦2勝、全妹シーソルティキッスは4戦未勝利(現役)。ディープ産駒のパローマも7戦して未勝利に終わりました。
3代母パイパーパイパーは、米26戦2勝。G1で3着に善戦したことがあります。
母系は、名門エスカッシャン牝系。スルーオゴールド、クリームフレシュ、ナサニエルなどが出ています。日本では、エリモシック、トゥザヴィクトリー、アパパネなどが出ました。ディープとの相性のよさで知られる母系で、マルセリーナ、アユサン、デニムアンドルビー、サトノルパンなどが出ています。

(1)母父キングカメハメハ
ディープ×母父キングカメハメハの配合も、このところ数が増えてきました。16頭がデビューして、12頭が勝ち上がり(うち1頭は地方)、重賞勝ち馬はデニムアンドルビーがいます。重賞が狙えそうな馬は、他にもかなりいるのですが、そういう馬に限ってローテーションが順調でなかったりするのは惜しいところですね。
気になるのは、やたらに全兄弟が多く、数頭の同じ繁殖牝馬(ウインターコスモス、ウィステリアアーチ、ミスアンコール、ハウオリなど)ばかりが交配されている点で、もっと積極的に試してほしい配合です。

(2)デニムアンドルビーとの共通点
ディープ×母父キングカメハメハの配合の出世頭は、デニムアンドルビーですが、ジナンボーとは母系も同じという共通点があります。図式的に書けば、ディープ×母父キングカメハメハ×エスカッシャン牝系が共通ということですね。

デニムアンドルビー
http://www.jbis.or.jp/horse/0001126790/pedigree/

デニムアンドルビーの母べネンシアドールは、ヌレイエフ4×2というクロスが強烈すぎて、ついノーザンダンサー5・7・5×3というクロスを見過ごしがちです。アパパネも、ノーザンダンサー5・7・5×5ですから、4本クロスという点で共通しています。
また、べネンシアドールのヌレイエフ4×2のクロスに対抗できるものとしては、トライマイベストニジンスキーソルトレイク(アパパネの母父)の組み合わせのクロス(ノーザンダンサー、メノウ、ブルドッグ、ブルーラークスパー、マンノウォーが共通)が指摘できそうです。ソルトレイクの配合が少し雑然としているのは惜しいですが、血量的には威力のあるクロスでしょう。
一方、相違点としては、べネンシアドールは、ハイインロー主体の配合なのに対し、アパパネのほうは、ナスキロラトロや米国血脈が中心の配合(ハイインローの血もそれなりにありますが)ということですね。

(3)まとめ
アパパネの配合は、ミスプロの血を別にすると、ノーザンダンサー×ナスキロラトロ×米国血脈でまとめられた配合で、方向性ははっきりしています。適度にハイインローの血があるのも好印象でしょう。
とはいえ、なんといっても目立っているのは、(2)でも指摘したように、トライマイベスト&ニジンスキー&ソルトレイクの組み合わせのクロスで、血量的にも強力です。ディープは、こうした強いクロスの繁殖牝馬を得意にしており、アパパネとの交配も成功する可能性が高いと考えられます。
また、ノーザンダンサーのクロスを持つ繁殖牝馬の産駒の場合、春のクラシックシーズンにもしっかり間に合うケースが目立っており、その点でも期待が持てそうです。
今のところ、全兄モクレレの成績がパッとしないため、POGではジナンボーにも疑いの目が向けられましたが、全兄や全姉が初仔の場合、配合上の問題なのか、初仔特有の体質などの弱さに由来する問題なのかは、慎重に見極める必要があります。その意味で、ジナンボーは不当に過小評価されていた面があったと言わざるをえません。
ディープ×アパパネの金子3冠配合は、これからも連発されるものと予想されますが、初仔のモクレレではなく、ジナンボーをひとつの基準として考えていくべきでしょう。

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引き続き、馬体のほうも見ていくことにします。
ジナンボーと兄モクレレの体型は、わりとよく似ていると思いますが、モクレレはサイズが大きすぎて仕上げにくい側面があったようです。
兄弟ともにディープらしさはあまりなく、モクレレはキングカメハメハ寄り、ジナンボーはキングカメハメハとアパパネの中間くらいの体型でしょうか。
ただ、モクレレは、ちょっと首が高いのが気になるところです。また、トモの比較では、ジナンボーのほうが張りがあると思います。
デイープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牡馬の10位タイに取りあげました。

モクレレ(2歳)
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アパパネ(2歳、産地馬体検査)
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キングカメハメハ(3歳)
https://livedoor.blogimg.jp/keiba100bai/imgs/0/5/05d4a195.jpg

最後に、今後の展望について。
デビュー戦の内容は申し分ないものでした。この時期の新馬戦のレベルは不確かなものではありますが、こういう勝ち方をする良血ディープ産駒の信頼性は高いです。
おそらく、ひと息いれて秋に備えるものと思われますが、クラシック路線に乗ってくると期待してよいでしょう。