今回は、ワグネリアンとヘンリーバローズの一騎討ちが注目された新馬戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=VU-IA4pcQjs
http://db.netkeiba.com/race/201707030605/

レースは前半5Fが67秒フラットの超スローペースとなりましたが、ヘンリーバローズは、好スタートから3番手につけ、ワグネリアンは、しっかり4~5番手で徹底マークする展開で、直線を向くと戦前の予想通りの一騎討ちとなりました。上がり3F33秒1の末脚くらべは、ワグネリアンが鼻差で制し、新馬勝ちをおさめています(なお、個別の上がり3Fのタイムは、ワグネリアンが32秒6、ヘンリーバローズは32秒8)。
これだけスローになると、後続も大きく離されることはないものなのですが、このレースの3着以下は5馬身もちぎられており、ワグネリアンとヘンリーバローズの2頭の能力の高さが際立つ結果となりました。2頭の勝敗を分けたのは、現時点での完成度の差でしょう。
ヘンリーバローズは、今年のPOGの人気馬の1頭ですが、全兄シルバーステートもデビュー戦は2着に負けており、あまり初戦からどうこうという血統ではではなさそうですから、とくに心配はいらないでしょう。
ワグネリアンは、金子オーナーの持ち馬で、ディープ×キングカメハメハの配合ですから、ジナンボーに続いての新馬勝ちということになります。
なお、次走は、9月の野路菊Sの予定。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001205273/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母ミスアンコールは、9戦1勝。産駒には、ワグネリアンの全姉が2頭いますが、テンダリーヴォイスは、アネモネS勝ちなど13戦2勝、ミンネザングは、6戦1勝(現役)。
祖母ブロードアピールは、ダート重賞を6勝し、トータルでは36戦12勝。ダートでの派手な追い込みで人気のあった馬ですが、実は芝でもスワンS&阪急杯&富士Sで2着になっています。
5代母ウォータークラスは、2頭のG1馬を出した名繁殖牝馬。
母系は、スワーヴダンサー、ハビタット、ダンサーズイメージなどが出た、ロイヤルメッセージ牝系。日本では、サクセスブロッケンが唯一のG1馬です。

(1)ディープ×キンカメハメハ
ディープ×母父キングカメハメハは、これまで18頭がデビューし、14頭が勝ち上がり(うち1頭は地方)、デニムアンドルビーが重賞に勝っています。
勝ち上がり率は高いのですが 重賞でも好走できそうな馬にかぎってローテーションが順調でないといった不運もあり、まだブレイクには至りませんが、ジナンボーにワグネリアンと2歳馬が好調ですし、いずれもっと注目されることになる配合でしょう。当ブログでは、開設当初からニックス候補に推しているので、いよいよブレイクが近づいてきた手応えを感じています。
あと、注目されるのは、母父キングカメハメハの重賞勝ち馬5頭のうち、1頭はディープ産駒のデニムアンドルビー、2頭がブラックタイド産駒のタガノエスプレッソ&ライジングリーズンですから、全兄弟のブラックタイド&ディープで5分の3を占めているのは、注目すべき数字でしょう。

(2)祖母ブロードアピールの配合
ブロードアピールは、先ほども触れたように、豪快な追い込みで人気のあった馬ですが、配合的にも典型的なナスキロ配合です。

ブロードアピール
http://www.jbis.or.jp/horse/0000287786/pedigree/

ターントゥ4・4×5と、プリンスキロ5・7×5のクロスをベースに、セクレタリアトの血などもあり、非常にナスキロ(厳密にはロイキロですが)色が強いのが見てとれるでしょう。
また、その父ブロードブラッシュは特異な配合で、ターントゥ3×3に、チェロキーローズ=ハウ3×5の全姉妹クロスがあり、考えようによっては、ファストターンヘイパッチャーの組み合わせのクロス(ターントゥ、チェロキーローズ=ハウが共通)と見ることも出来ますが、とにかく強烈なナスキロ配合となっています。
ワグネリアンとしては、ターントゥ5×6・6・7ハウ=チェロキーローズ6×6・8(ポカホンタス5×7)、サーゲイロード≒セクレタリアト6×5となります(プリンスキロは、ハウやサーゲイロードにも含まれますが、トータルでは、9・7×7・9・7)。また、見方によっては、レディレベッカとヘイパッチャーとは、組み合わせのクロス(ターントゥ、ポカホンタス、サーギャラハッド=ブルドッグ、マンノウォーが共通)と考えることも可能です。
ヘンリーバローズを差し切った末脚は、ブロードアピールのナスキロ配合が、ディープと結び付けられたことによるものと考えてもよいでしょう。

(3)まとめ
(2)では、祖母ブロードアピールの配合にスポットを当てました。しかしながら、ディープとブロードアピールの間には、ブロードピークという牝馬の産駒がいますが、1勝止まりで終わったように、ディープとブロードアピールだけでは、ワグネリアンのような馬は生まれないでしょう。
ブロードアピールは、その優れた競走成績のわりには、繁殖成績はパッとしませんでした。ナスキロ+米国血脈という配合は、方向性が明確なので、競走馬としては上手く嵌れば活躍馬が出そうな感じですが、繁殖牝馬として考えた場合、あまりにも単調で、産駒の成長力などにも期待しにくいと考えられます。
そのブロードアピールにキングカメハメハを交配して生まれたのが、ミスアンコールということなのですが、これまでの産駒は全て中央で勝ち上がっており、テンダリーヴォイスはまずまず活躍したので、すでに繁殖成績は母を超えていると言ってもよさそうです。しかし、母とは逆に、競走成績のほうはさっぱりでした。
このあたりが血統の難しいところで、キングカメハメハ×ブロードアピールの配合は、競走馬としてはダートのマイラーかなといった印象ですが、繁殖牝馬として活躍馬を出すために間口を広げたものと考えれば、ワグネリアンやテンダリーヴォイスなどの素質馬が出ても不思議ではありません。
ワグネリアンの末脚は、祖母の配合が大きく影響していますが、だからといって、ディープ×ブロードアピールの直接的な掛け合わせでは、ブロードピークのような馬が出来てしまうということなので、キングカメハメハというワンクッションが大きな役割を果たしているというわけですね。

パドック画像
https://livedoor.blogimg.jp/keiba100bai/imgs/e/a/ea13c147.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
POG本には掲載がなく、ネット上にも良い画像が見あたりません。
リンクしたのは、パドック画像ですが、いかにもディープ産駒らしい胸の深さは見てとれるものの、詳細はよく判らないですね。もっと見やすい画像が入手できたら、詳しく見ていくことにしましょう。

テンダリーヴォイス(3歳、桜花賞)
http://www.keibado.com/keibabook/150413/photo02.html

最後の、今後の展望について。
強気にヘンリーバローズにぶつけてきたように、陣営はかなり自信をもっていたようですし、実際のレース内容も素晴らしいものでした。
唯一の心配点としては、馬体がさほど大きくなく、迫力という点では、ヘンリーバローズのほうが目立っていたというあたりでしょうか。
しかし、ナスキロ過剰な配合ですから、現時点ではまだまだ緩さのほうが目につくので、今後、もっと馬体に芯が通ってきた時、どこまで成長するのかがポイントになりそうです。
成長力という点では、キングカメハメハが豊富に抱えているハイペリオンの血に期待することになると思いますが、そのあたりが上手く機能するかどうかでしょう。
とはいえ、デビュー戦の内容から、クラシック路線に乗ってくることは間違いなさそうで、あとは、本番でも結果を残せるのか、テンダリーヴォイスのようにトライアル止まりで終わるのかということですね。