今回は、エントシャイデンの新馬戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=evtu97jvbcA
http://db.netkeiba.com/race/201704020905/

スタートが今ひとつで、中団より後ろからのレースとなりましたが、直線は大外を回して豪快に差し切りました。着差は首差でしたが、2着馬はインをぴったり回って完璧なレース運びでしたから、実際には着差以上の力の差があると思われます。
重賞2勝のブランボヌールの全弟ですが、1つ上の全姉ピンクガーベラが未勝利に終わり、ブランボヌールの近走も頭打ちの感じがあるので、POG人気は思ったほどでもなかったようですが、終わってみれば快勝でした。
なお、次走は、京王杯2歳Sの予定だそうです。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001205725/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母ルシュクルは、15戦3勝。ダコールの半姉ですね。産駒は、上述のように、ブランボヌールとピンクガーベラがいます。
祖母アジアンミーティアは、16戦4勝(勝ち鞍は全て地方)。大種牡馬アンブライドルズソングの全妹になります。ディープとの間には、5頭の産駒がいて、ダコールなど3頭が勝ち上がり。未勝利に終わった2頭は、1頭が未出走、もう1頭も2戦しか走れませんでした。
3代母トロリーソングは、アンブライドルズソングの母ですが、12頭の産駒には未勝利馬や未出走馬も多く、特筆すべき戦績をあげたのは、アンブライドルズソングだけのようです。
4代母ラッキースペルは、米G3を2勝。産駒からは、重賞勝ち馬も出ています。
5代母インカンテーションは、G1戦2勝のシアトルソングの母。
母系は、アメリカの中堅どころの、アーティフィス牝系。たまに、アンブライドルズソングやシアトルソング、トゥイストアフリートなどの大物が出ますが、アヴェレージは今ひとつな印象。当たり外れのはっきりしている系統のようです。

(1)母父サクラバクシンオー
ディープ×母父サクラバクシンオーの配合は、11頭がデビューして、9頭が勝ち上がり(うち4頭は地方)、アデイインザライフとブランボヌールが重賞に勝っています。
勝ち上がり率はまずまずですし、重賞勝ち馬も出ていますが、なんといっても、ブラックタイド×母父サクラバクシンオーの配合から、キタサンブラックという大物が出ているのは注目でしょう。母父サクラバクシンオーの産駒からは、6頭の重賞勝ち馬が出ていますが、半数の3頭の父がディープ&ブラックタイドであることも重要ではないでしょうか。サクラバクシンオーは、必ずしもサンデー系と相性がよいわけではないのですが、ディープ&ブラックタイドの兄弟は例外なのかもしれません。

(2)アンブライドルド&アンブライドルズソング
ディープと、アンブライドルド&アンブライドルズソング父仔との相性がよいことは、よく知られた事実でしょう。
ディープ×父アンブライドルドは、8頭がデビューして、7頭が勝ち上がり(全て中央)、2頭が重賞に勝っています。
ディープ×アンブライドルズソングでは、7頭がデビューして、全て中央で勝ち上がり、ダノンプラチナがG1に勝ちました。
父と仔を併せて、15分の14のハイアヴェレージで、しかも、全てが中央での勝ち上がりという点も特筆すべきでしょう。
祖母アジアンミーティアは、アンブライドルド産駒で、アンブライドルズソングの全妹ですから、ディープと好相性なのも当然ですね。

(3)プリンスリーギフトとプリンスキロの微妙な関係
サクラバクシンオーの父系は、プリンスリーギフト系で、日本で一世を風靡した系統です。しかし、プリンスリーギフト系には、ある不思議な特徴があります。それは、ナスキロ配合の成功例が少ないという事実です。
プリンスリーギフトは、ナスルーラ産駒ですから、ナスキロのニックス配合が効果的なはずですが、テスコボーイトウショウボーイミスターシービーの父仔孫には、プリンスキロの血がありません。サクラユタカオー&サクラバクシンオーの父仔にも無く、テスコガビーにもカツラギエースにもキタノカチドキにもハギノカムイオーにもありません。海外の活躍馬に目を向けても、ラインゴールドにもサンプリンスにもフロリバンダにもリアルムにも無いのです。これは、ちょっと異常事態ともいえる状況でしょう。
しかし、そうした状況は、サクラバクシンオーの産駒の世代においては、変化が見られるようです。サクラバクシンオー産駒の活躍馬には、プリンスキロの血を持つ割合が高く、とくに、グランプリボス、シーイズトウショウ、ダッシャーゴーゴーといった、代表産駒にプリンスキロの血があります。もっとも、この期に及んでも、ショウナンカンプやビッグアーサーといった、ナスキロ配合ではないG1馬の出るところが、プリンスリーギフト系の面白いところです。
母父としてのサクラバクシンオーとなると、さらにこの傾向がはっきりしてきて、6頭の重賞勝ち産駒のうち、父馬がプリンスキロの血を持たないケースは、1つもありませんでした。ディープやブラックタイドが、サクラバクシンオーとさほど相性のよくないサンデー系にもかかわらず、活躍馬を出しているのは、プリンスキロの血を持つせいもあるでしょう。

(4)まとめ~ハイぺリオンの成長力
サクラバクシンオーは、ミスプロの血と相性がよいので、そもそもルシュクル自体も好配合ですが、そこへディープですから、成功する確率の高い掛け合わせでしょう。
とはいえ、全姉ブランボヌールの早熟さが気になるかたも多いと思いますが、性別の違いは、意外に大きな要素となってくるかもしれません。
サクラバクシンオー産駒の活躍馬は、圧倒的に牡馬が多いのは有名で、母父サクラバクシンオーの産駒でも、重賞に勝った牝馬は、ブランボヌールしかいません。しかも、たしかにサクラバクシンオーには早熟のイメージがありますが、だからといって、古馬になって急に失速する産駒は、実はかなり少ないのです。グランプリボス、ビッグアーサー、ショウナンカンプ、ダッシャーゴーゴーなど、いずれも古馬になっても息長く活躍しています。
その原因は、サクラバクシンオーが大量に抱えるハイぺリオンの血の成長力にあると言えるでしょう。ただし、ハイぺリオンの血には、ある特徴があります。それは、ハイぺリオンの血を大量に持つ牝馬は、馬体が小さめになる確率が高いという点です。そのため、サクラバクシンオーの産駒の活躍馬には、牡馬が多いのだと考えられます。
エントシャイデンは牡馬ですから、ブランボヌールのように古馬になって急失速する可能性よりも、ハイぺリオンの血の成長力によって息長く活躍し続ける可能性のほうが高いのではないでしょうか。

https://daily.c.yimg.jp/horse/toranomaki2/2017/05/01/Images/10146676.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
いくらか寸の詰まった体型で、矢作師は何とか皐月賞くらいはこなしてほしいと考えているようですが、基本的にはマイラータイプと見てよさそうです。
全姉ブランボヌールにも似ていますが、大きな違いは、エントシャイデンのほうが相当に脚が長いという点でしょうか。ブランボヌールが短足というわけではなく、エントシャイデンの脚の長さは、かなり目立つ特徴ですね。

ブランボヌール(2歳)
http://4.bp.blogspot.com/-8yvUxXODk3A/VUtdjTGt2fI/AAAAAAAAG4g/sdF3O6gW1kA/s640/umaspe49.png

最後に、今後の展望について。
マイル路線で活躍する可能性は、かなり高いと思われますが、2000mくらいの距離がどうなのかという点は不透明ですね。ディープ×サクラバクシンオーの配合では、アデイインザライフは、むしろ2000m前後を得意にしていましたが、胴の長さもしっかりあった馬なので、比較の対象としては適当ではないでしょう。
繰り返しになりますが、ハイぺリオンの血がしっかりあるので、むしろ古馬になって本領発揮というケースも考えておくべきかもしれないと思います。