更新が遅れている間に連勝してしまったパターンの第2弾ということで、オブセッションを取りあげることにします。
シクラメン賞の勝ち時計は、鳥肌ものでした。

新馬戦
https://www.youtube.com/watch?v=dUbRDM3GMmo
http://db.netkeiba.com/race/201705040605/

シクラメン賞
https://www.youtube.com/watch?v=B9KVRsBz1kw
http://race.netkeiba.com/?pid=race&id=c201709050109&mode=result

デビュー戦は、道悪のレースとなりましたが、スタートで出遅れたうえに、かなりのスローペースで、後方につけた馬たちにとっては厳しい展開となりました。直線では、人気を分けたラムセスバローズとの一騎討ちとなりましたが、展開的には好位で流れに乗っていた相手のほうが有利だったものの、最後は半馬身差で叩き合いを制して新馬勝ちを果たしました。不利な要素が重なってしまったので、負けなくてよかったというところでしょう。
2戦目のシクラメン賞は、デビュー勝ちの内容の素晴らしかったダノンフォーチュンが人気を集め、オブセッションは2番人気にとどまりました。レースは、人気の2頭が後方で牽制しあう展開となりましたが、直線では、オブセッションが一気に突き放し、最後は流しての完勝でした。ダノンフォーチュンの新馬戦は非常に強い内容でしたから、これをまったく寄せ付けないということは、かなりの能力だと考えねばならないでしょう。
1分45秒6の勝ち時計は、2歳レコードでしたが、それよりも注目すべきは、1800m時代のチャレンジCや、12月の阪神開催の開幕週に行われることも多い古馬準オープンの逆瀬川S(距離も同じ1800m)の、過去すべての勝ち時計を上回っていたことです。たまたま、特定の1つのレースだけ上回っていたとかではなく、同じ12月の阪神開催の古馬の重賞や準オープン特別の歴代の勝ち時計すべてより速いなどということは、異常事態だと言わざるをえません。まさに、衝撃の勝ち時計でした(補足ですが、こういう比較は、時期的に近いレースどうしでないと意味がないので、例えば、時計の出る9月開催のレースなんかと比較しても仕方ありません)。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001208195/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母パーシステントリーは、ダートの米G1に勝っています。産駒は、全兄姉が3頭いますが、トーセンゲイルは9戦未勝利、パーシーズベストは15戦2勝(現役)、ステッドファストは10戦1勝(現役、中央では未勝利)ということで、オブセッションは待望の大物候補ですね。
3代母ヘヴンリープライズは、米G1戦7勝の活躍馬。繁殖牝馬としても、米G1を2勝したグッドリワードを出しました。
4代母オーホワットアダンスは、競走馬としては平凡な成績に終わりましたが、繁殖牝馬としてはG1馬を出しています。
5代母ブライティは、G1馬2頭を出した名繁殖牝馬。
母系は、ウォーエンブレム、ダンシングスプリー、ヘヴンリープライズなどの出た、フィラント牝系。日本には、あまり入ってきていない系統で、これといった活躍馬も出ていないようです。種牡馬としては、ウォーエンブレムやブレイヴェストローマンが輸入されています。

(1)母パーシステントリー
オブセッションの母パーシステントリーの配合は、大まかには、ミスプロ×ノーザンダンサー×ナスキロラトロと整理されるでしょう。その両親とも同じような配合パターン(祖母ジャストリワードには、プリンスキロの血が欠けていますが)で、父母相似配合的と言えそうです。
ミスプロ3×4や、ノーザンダンサー4×4・5のクロスが目を引きますが、個々のクロスは、父母相似配合の結果と考えるべきでしょう。

スモークグラッケン(パーシステントリーの父)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000368103/pedigree/
ジャストリワード(パーシステントリーの母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000846592/pedigree/

ディープは、ノーザンダンサー×ナスキロラトロの配合形の繁殖牝馬とは好相性ですが、その牝馬の配合が父母相似配合的ということであれば、なおさらポイントのはっきりした配合と言えそうです。ナスキロ的な末脚の切れが期待できるだけでなく、ノーザンダンサーやラトロワンヌの血により適度な硬さや馬力も加わって、パワフルな差しを見せてくれそうです。

(2)米国血脈
パーシステントリーには米国血脈が豊富で、とくに、エイトサーティグッドエグザンプルスピードボート7×6・9の相似クロスはかなり強力ですし、ラトロワンヌの血も4本あります。
また、ディープ側とも関連して、以下の多くの馬たちが絡んだ組み合わせのクロス(テディ、ブラックトニーマンノウォーパイラトが共通)が生じている点も注目されます。

ノーサードチャンス(サンデーの父父母&パーシステントリーの父母父母母父母&パーシステントリーの父母母母父父母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000388312/pedigree/
アンポーラ(パーシステントリーの父父母父母母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000386737/pedigree/
シャイビム(パーシステントリーの父父母母母母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000389405/pedigree/
サーチング(パーシステントリーの父母父母母母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000388657/pedigree/
シャクニー(パーシステントリーの母父母母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000392195/pedigree/
ブサンダ(パーシステントリーの母母父母父母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000389645/pedigree/
フレイミングペイジ(パーシステントリーの母母母父母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000387574/pedigree/
ソードダンサー(パーシステントリーの母母母母母父)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000334518/pedigree/

これだけの数の馬が関われば、血量的にもそこそこの威力がありますが、それよりも米国血脈の最良の部分が結集されてクロスをなしていることのほうが重要でしょう。テディはサーギャラハッド&ブルドッグ兄弟やラトロワンヌ、ブラックトニーはブルーラークスパーやビッグハリー&バイムレック姉弟、マンノウォーはウォーアドミラルやスピードボート(ウォーレリックの全姉)といった形で含まれている場合もあり、米国血脈の精髄の集約ともいうべき配合となっています。
ディープ産駒の場合、個人的には、母馬の配合が米国血脈に片寄りすぎるのは好ましくないという考えですが、こうした最良の要素がクロスという形で凝縮されていれば、相当な破壊力があると見るべきでしょう。

(3)まとめ
母パーシステントリーの配合は、方向性が明確なので、これ以上に付け加えることもあまりないのですが、様々な血がごちゃごちゃと配置されているので、本来の意図した方向性どおりに発現されるかどうかということについては、必ずしも確実性が高いとは言えないかもしれません。その意味では、当たり外れの大きいタイプと言えそうです。うまく当たりが出れば、芯のしっかりした馬力に支えられた末脚を持つ馬が出そうですが、外れとなると、緩い大外専用馬とか、がっちりとして馬力はあるけど柔らかみに欠けるような馬とかが出来てしまうこともあるでしょう。
血統表を細かく分析するより、当たり外れを見極めることのほうが重要になりそうですね。

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引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
大柄ですが、スマートさも感じられ、適度な胴伸びもあります。ディープ×アンブライドルズソングの配合などでよく見かける体型で、おそらく、ミスプロの血が強めに出ているのでしょう。
一般論としては、1600m~2000mくらいに向いた差し馬という見立てになりそうですが、オブセッションのシクラメン賞の勝ち方は、そうした一般論で片づけていいものか迷うところです。というのも、ミスプロの血は、まれに確変を引き起こすことがあるので、そうなると、もはや見た目で判断することは無意味になってしまう可能性もありうるからです。しかし、ここは馬体を検討する場なのですから、いちおう、ダノンプラチナをスケールアップさせたような馬体という評価を下しておきたいと思います。

スモークグラッケン(オブセッションの母父)
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ミスタープロスペクター
https://www.sportingpost.co.za/wp-content/uploads/2013/10/Mr-Prospector.jpg

ダノンプラチナ(2歳、朝日杯)
http://race.sanspo.com/keiba/images/20141218/yos14121813030003-p1.jpg