今回は、ヘンリーバローズの未勝利戦を取りあげます。

https://www.youtube.com/watch?v=QuXxk9K9SxE
http://db.netkeiba.com/race/201709040803/

デビュー戦では、ワグネリアンとの一騎討ちに鼻差で後れをとったヘンリーバローズでしたが、2戦目の未勝利戦は、持ったまま一回りの公開調教のようなレースで圧勝しました。その後のワグネリアンの快進撃を見ても、ヘンリーバローズの能力の高さは疑いようがありません。ワグネリアンとの新馬戦は、今年の“伝説の新馬戦”候補でしょう。
なお、次走は京都2歳Sが予定されていましたが、良化途上ということで見送られ、年内は出走しないようですね。

http://www.jbis.or.jp/horse/0001208483/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていくことにしましょう。
母シルヴァースカヤは、フランスでG3重賞を2勝しています。代表産駒は、G1戦1勝2着4回のセヴィル(父ガリレオ)。ディープとの間には、上にオリハルコン&シルバーステート、1つ下には全弟がいます。
祖母ブブスカイアは、代表産駒のデインスカヤが輸入され、シックスセンス(京都記念)を出しました。
3代母フレネティクは、産駒のウィルダンサーがG1に勝っています。
母系は、ややマイナーな、フィーユダムール牝系。G1馬はなかなか出ない系統で、前出のセヴィルも欧州ではG1に手が届かず、オーストラリアに移籍してやっとG1に勝ちました。日本では、シックスセンスが目立つ程度で、シルバーステートが引退してしまったからには、ヘンリーバローズにかかる期待は大きいでしょう。

(1)サンデー×ロベルト×ニジンスキー
相性が微妙と言われることもある、サンデー系とロベルト系ですが、サンデー×ロベルト×ニジンスキーの配合からは、以前から大物が続出していました。具体的には、エピファネイア、エスポワールシチー、スリーロールス、メイショウマンボなどです。
ディープも、POG格言的にロベルト系との相性は悪いと言われた時期もありましたが、サトノラーゼンとシルバーステートの出現をきっかけに、母父ロベルト系の産駒が活躍しはじめました。

サトノラーゼン
http://www.jbis.or.jp/horse/0001157744/pedigree/

そのサトノラーゼンとシルバーステートの配合は、ともに、ディープ×母父ロベルト系×母母父ニジンスキー系というパターンだったわけです。
ニジンスキー以外にも、サンデー系×ロベルト系の成功例によく見られる種牡馬としては、ミスプロやヌレイエフがあげられますが、ディープの場合も、ダノンプレミアムやゼーヴィントにはミスプロ、ディーマジェスティにはヌレイエフ、アドミラブルにはサドラーズウェルズ(≒ヌレイエフ)があり、同じような成功パターンとなっているようです。
では、ニジンスキー、ミスプロ、ヌレイエフの共通点は何かと考えたとき、浮かび上がってきたのが、サンデー×ロベルトの配合で必ず生じる、フリーフランスジョンズタウンの相似クロスを、何らかの形で補強しているということでした。
ミスプロには、ジョンズタウンの血があるので、分かりやすい形での補強となっています。
ニジンスキーのほうは、フリーフランスやジョンズタウンと配合の似ている、フレイミングトップの血があります。
他方、ヌレイエフやサドラーズウェルズには、ジョンズタウンやフリーフランスに類する血はありませんが、両馬の母であるラフランスの血と配合の似ている、フレアズの血がありますから、これも補強に役立っていると考えてよいでしょう。フレアズの血は、ノーザンテースト、ストームバード~ストームキャット、ナイトシフトなどにも含まれており、応用の範囲が広そうですね。
母父ロベルト系のディープ産駒の重賞勝ち馬は、ディーマジェスティ、サトノラーゼン、アドミラブル、ダノンプレミアム、ゼーヴィントの5頭ですが、いずれもこのパターンに当てはまっています。また、血統表のどこかにロベルトの血がある重賞勝ち馬まで範囲を広げると、ビューティパーラー、ステファノス、シャイニングレイ、マウントロブソンの4頭が該当しますが、やはり全ての馬がパターンに当てはまっています。

(2)シルヴァーホークとニニスキ
シルヴァーホークは、なかなか掴みどころのない種牡馬で、配合の成功パターンも一筋縄ではいきません。あえて、相性のよい血をあげるなら、サドラーズウェルズ&ヌレイエフ、ダンジグ、ニジンスキー、リボーなどでしょうか。そうした観点から、注目すべきなのは、母母父ニニスキでしょう。

ニニスキ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000336870/pedigree/

父ニジンスキー×母父リボー系ということで、いかにもシルヴァーホークと相性がよさそうですが、母母父ライダンは、スペシャルの母ソングの全兄です。スペシャルは、ヌレイエフの母&サドラーズウェルズの祖母ですから、その点でも相性がよいと考えられます。
一方、ディープとの相性を考えても、ディープはニジンスキーやスぺシャルと相性がよく、ポカホンタスのクロスも発生するので、こちらも好相性といってもよいでしょう(ポカホンタスのクロスについては後述)。
ディープとシルヴァーホークの間を、ニニスキが取り持つような配合と言えそうですね。

(3)ポカホンタス
シルヴァーホーク産駒の名繁殖牝馬と言えば、マグニフィセントスタイルとシルバーレーンでしょう。

マグニフィセントスタイル
http://www.jbis.or.jp/horse/0000438983/pedigree/
シルバーレーン
http://www.jbis.or.jp/horse/0000410952/pedigree/

マグニフィセントスタイルは、G1馬3頭、シルバーレーンは、G1馬2頭を出しています。
この2頭の繁殖牝馬に共通するのが、ポカホンタスの血で、もちろん、シルヴァースカヤにもあるわけです。
ポカホンタスの血は、ディープの側にもあるので、ヘンリーバローズの場合、ポカホンタス5×6のクロスとなります。
ポカホンタスのクロスを持つディープ産駒としては、サトノダイヤモンド、マカヒキ&ウリウリ、ヴィルシーナ&ヴィブロス、トーセンスターダム、ビューティパーラー、サクソンウォリアー、マルセリーナなどがいます。いつのまにやら、G1馬が8頭にもなりましたが、今年の2歳産駒はこのクロスの当たり年で、ヘンリーバローズの他にも、サクソンウォリアー、ワグネリアン、ダノングレースなどにあります。

(4)まとめ
サンデー系×ロベルト系の活躍馬は、どちらかといえば、サンデーよりもロベルトの影響が強い馬が多く、ヘンリーバローズやシルバーステートの場合も同様でしょう。ヘイロー~サンデー系の軽快さに対して、ロベルト系は重厚さを感じさせるのが特徴です。
ヘンリーバローズは、体型的にもシルヴァーホーク色が強く、ディープ的な切れ味の鋭さよりも、ロベルト系的な地力で圧倒するようなレースをしそうです。
兄のシルバーステートが引退した分まで活躍してほしいですね。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba/keiba/2017/assets_c/2017/06/henry-baroz-thumb-550xauto-189395.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
繰り返しになりますが、体型的には、完全にシルヴァーホーク寄りで、ディープの要素は殆んどありません。
シルバーステートもシルヴァーホーク寄りでしたが、それでもヘンリーバローズに較べれば、まだいくらかディープの要素も残していたと思います。
ヘンリーバローズは、シルバーステートよりも、むしろシルヴァーホークの日本での代表産駒のグラスワンダーなんかに似ていると言えるかもしれませんね。
今年のデイープの2歳産駒の馬体評価リストでは、牡馬の2位に取りあげました。

シルヴァーホーク
https://i.pinimg.com/originals/99/d5/e8/99d5e842a0eeca05ab3a8c88d250fbaa.jpg
グラスワンダー
http://www.jbis.or.jp/horse/images/0000299089_1/

シルバーステート(2歳)
http://umanity.jp/img_view_horse.php?code=2013105903&os=0
オリハルコン(2歳)
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