カンタービレ&トーセンブレスが、フラワーCでワンツーを飾ったので、取りあげましょう。
とはいえ、トーセンブレスは以前に扱ったので、今回はカンタービレを中心に見ていきます。

https://www.youtube.com/watch?v=72IoGTws1mc
http://db.netkeiba.com/race/201806020711/

カンタービレは、未勝利脱出に3戦を要しましたが、前走の楽勝ぶりが評価され、2番人気に推さていました。一方、トーセンブレスは、阪神ジュベナイルフィリーズ4着のさいに先着された上位3頭が、そのままチューリップ賞でも上位を独占し、あらためて見直されたものの、極端な追い込み脚質に疑問符がついての3番人気。なお、1番人気は、札幌2歳Sを制したロックディスタウンでした。
道中、好位につけたカンタービレに対し、トーセンブレスもこれまでよりは幾らか前のポジションを取りましたが、レースは前半5Fが61秒5のスローな流れに落ち着きます。この流れを見て、直線に向くと早々にカンタービレが先頭に立ち、トーセンブレスが追い込んで2頭の叩き合いとなりますが、ペースを味方につけたカンタービレが首差で競り勝ち、重賞初制覇となりました。3着以下は離されたので、両馬の力がここでは一枚上だったということでしょう。
レース後の陣営からのアナウンスによると、カンタービレはオークス直行、トーセンブレスは桜花賞に登録して、抽選に賭けることになりました(現時点で3分の2の確率)。


http://www.jbis.or.jp/horse/0001208207/pedigree/

それでは、血統のほうから見ていきましょう。
母シャンロッサは、英15戦1勝。カンタービレは、4頭目の産駒となりますが、それ以前の産駒にこれといった活躍馬は出ていません。
祖母パラクーナは、仏米17戦3勝。産駒から重賞勝ち馬が出ています。なお、シャンロッサの全妹シェイラトス(英9戦1勝)も日本に輸入されています。
4代母ポーリスタナは、仏ダービー馬ポリテインの母。晩年、日本に輸入されましたが、持ち込みのウッドマンドーターは未出走に終わり、あとは不受胎が続き、結局、ウッドマンドーター1頭のみが後継として繁殖に上がりました。
5代母ニアミーナウは、自身は未出走に終わったものの、産駒から重賞勝ち馬が出ています。
母系は、アメリカのややマイナーな、エンチャンテッドイヴ牝系。日本にはあまり入っていない系統で、これといった活躍馬はいないようです。もしかすると、カンタービレは、この牝系で初めての日本での重賞ウイナーかもしれません。

(1)ディープ×ガリレオ
ディープ×母父ガリレオの産駒は、10頭がデビューして、8頭が勝ち上がり(うち2頭は海外)、重賞勝ち馬は3頭、サクソンウォリアーがG1に勝っています。勝ち上がり率も上々で、はやくも重賞勝ち馬が3頭も出ているのは注目されるところでしょう。
また、現時点で母父ガリレオの重賞勝ち馬を出している国内の種牡馬は、ディープだけです。まだまだサンプルは少ないものの、好相性と見なしてもかまわないでしょう。
ディープ×ガリレオの配合上の強みとしては、栗山求氏が指摘される、ディープ×ミスプロ×ノーザンダンサー×スペシャルのパターンが、自動的に成立することです。
ガリレオの母系がドイツ血統である点も、ディープと相性のよさをもたらす要因の1つになっていると思われます。

(2)シャンロッサとキングカメハメハ
母シャンロッサの配合は、キングカメハメハと似ています。

シャンロッサ
http://www.jbis.or.jp/horse/0001128844/pedigree/
キングカメハメハ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000729458/pedigree/

具体的には、サドラーズウェルズ≒ヌレイエフ、ミスプロ、ラストタイクーンが共通です。
当ブログでは、ディープ×キングカメハメハの配合をニックス候補として推していますが、実際に勝ちあがり率も高く、結果を残しています。
シャンロッサの配合が、キングカメハメハと似ているのであれば、ディープとの相性度も高いと推測されるでしょう。
なお、ガリレオ×ラストタイクーンということでは、ヴァンキッシュランの母リリーオブザヴァレーとも共通しており、再現性の高いパターンと言えるかもしれません。

リリーオブザヴァレー
http://www.jbis.or.jp/horse/0001128885/pedigree/

(3)祖母パラクーナの配合
6代母テンプテッドから、祖母パラクーナに至るまでの配合の流れは、なかなか興味深いものがあります。

テンプテッド(6代母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000385558/pedigree/

まず、テンプテッドの配合ですが、セレーネ3×5の牝馬クロスが核となっています。セレーネは、ハイぺリオン、シックル、ファラモンドなどを出した名繁殖牝馬です。

ニアミーナウ(5代母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000406297/pedigree/

テンプテッドのセレーネのクロスを更に継続・発展させる形で、ハイぺリオン3×3という強いクロスが施されます。先に触れたように、ハイぺリオンは、セレーネの産駒です。このハイぺリオンの強いクロスが、その後の配合の流れの基盤となっていきます。

ポーリスタナ(4代母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000406298/pedigree/

4代母ポーリスタナでは、さらにハイぺリオン~セレーネを追加して、ハイぺリオン3×4・4(セレーネ5・4×5・5・7)とします。

パラヴェラ(3代母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000436108/pedigree/

3代母パラヴェラでは、次の段階への布石として、ネアルコ6・5・6×4のクロスが施されます。ネアルコの父母父チョーサーは、ハイぺリオンの母父でもあります。

パラクーナ(祖母)
http://www.jbis.or.jp/horse/0000444347/pedigree/

そして、仕上げは、アイリッシュラス3×4の牝馬クロスになります。アイリッシュラスは、ノガラ3×3の牝馬クロスと、ファロス=フェアウェイ3×3の全兄弟クロスを配合の核としていますが、ネアルコの配合が、父ファロス×母ノガラですから、ファロスの母父チョーサーを介して、ハイぺリオンとも結び付けられているわけです。
この一連の流れは、実に見事なもので、今後、パラクーナの分枝は更なる発展を期待してよいでしょう。また、日本で活躍馬が出ていなかったこの母系からの初の重賞勝ち馬が、パラクーナの分枝から出たことにも必然性があったと考えてよく、シャンロッサの全妹シェイラトスも、競走成績は平凡ながら、ディープを交配すれば、カンタービレのような産駒が出る可能性も充分にあると思われます。

(4)まとめ
シャンロッサの配合で、もう1つ注目しておくべきは、ホープスプリングズエターナルミルリーフ4×4の相似クロスで、ナスキロラトロの要素が強化されています。このクロスは、(2)で触れたガリレオラストタイクーンの相性のよさの、配合的な根拠と考えてよさそうです。
カンタービレは、今のところ、ハイぺリオンの要素を活かして前受けの競馬をしていますが、何らかの事情で後方に控えざるをえない展開になっても、それなりの末脚を期待してよいでしょう。
カンタービレは、血統面からは、大きなレースでも期待できる本格的なものと言えるので、やはり、課題は馬体の小柄さになると思われます。

2歳
http://jra-van.jp/fun/pog2017y/catalog/imgs/p092-04.jpg

引き続き、馬体のほうも見ていきましょう。
いかにもディープ牝馬といった、スマートな体型ですが、サドラーズウェルズの血が入っているせいでしょうか、適度に胴伸びもあり、なかなかの好馬体でしょう。
繰り返しになりますが、課題は、やはり馬体重ということになります。
その意味では、初勝利に手間取って3戦を要し、体重も徐々に減ってきていたので、桜花賞をパスしてオークス直行を決断したのは、大正解だと思います。
デビューからの2レースはマイルを使い、3~4戦目は1800mに距離を延ばしましたが、あきらかに1800mのほうが好結果が出ているので、距離延長もプラスになるでしょう。