https://www.youtube.com/watch?v=OxdVt5WSLA4
http://db.netkeiba.com/race/201609020511/
http://www.jbis.or.jp/horse/0001121015/pedigree/
5歳(エリザベス女王杯)
http://www.keibado.com/keibabook/151116/photo08.html
(以下、編集中)
ディープインパクト産駒を研究してPOGでの勝利を目指すシロウト競馬ファンの奮闘記
菊花賞を簡単に振り返っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=CeQAlwajBoQ
http://db.netkeiba.com/race/201308040711/
最後の1冠のレースにキズナもロゴタイプも不在とあれば、エピファネイアが断然の人気になるのは当然で、実際も人気どおりの圧勝でした。
気性面での成長は明らかで、道悪も得意だと思います。
ディープ産駒は、サトノノブレスが2着、ラストインパクトが4着と、まずまずの結果でした。
http://www.jbis.or.jp/horse/0001124297/pedigree/
エピファネイアについて、ディープ産駒ではありませんが、すこしだけ見ておきます。
まず、シンボリクリスエス×BMSスペシャルウィークの配合は、他にもユールシンギングがセントライト記念に勝ち、いま注目のパターンです。シンボリクリスエスのBMSゴールドメリディアンは、典型的なナスキロラトロ配合のシアトルスルーの産駒です。スペシャルウィークもロイキロラトロの形なので、その点で相性がよかったのだろうと思います。エピファネイアの母のBMSが、ナスキロラトロ配合が大好物のサドラーズウェルズであることも、配合のキーポイントがナスキロラトロにあることを示唆しているでしょう。
エピファネイアの馬体については、ダービーの投稿で母シーザリオそっくりだということを指摘しましたが、ひと夏を越しても、あいかわらず似ていますね。
エピファネイア(菊花賞)
http://www.keibado.com/keibabook/131021/photo01.html
エピファネイア(2歳)
http://www.jbis.or.jp/horse/images/0001124297_3/
エピファネイア(1歳)
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/023/485/56/N000/000/000/131659889895413105707.jpg
シーザリオ(オークス)
http://www.keibado.com/keibabook/050523/photo10.html
シンボリクリスエス(ダービー)
http://www.keibado.com/keibabook/020527/photo10.html
さて、2着サトノノブレスと4着ラストインパクトについても、これまで機会が無かったので、ここで触れておきましょう。
まずは、2着のサトノノブレスから。
http://www.jbis.or.jp/horse/0001119611/pedigree/
はじめに血統から見ていくことにしますが、ディープ×BMSトニービンの配合で、母クライウィズジョイは、オークス馬ベガの近親にあたります。母クライウィズジョイの配合に注意しながら、順を追って検討してみましょう。
(1)ディープ×BMSトニービンの産駒の傾向
ディープ×BMSトニービンのパターンは、昨今のPOG戦術としては、本格化に時間がかかるので、ダービールールでは避けたほういいのではという見方もあるようです。
この配合は、これまで24頭がデビューして17頭が勝ち上がっている(すべて中央)ので、率としてはまずまずでしょう。
重賞勝ち馬はグルヴェイグだけですが、サトノノブレスが菊花賞2着、コティリオンがNHKマイル2着、ロードアクレイムが神戸新聞杯2着、ラウンドワールドが札幌2歳S2着と、やたらと2着が多いのも特徴です。これは、条件戦でも往々にして見られる現象で、未勝利に終わった6頭(1頭は現役)の中にも、2着には来たことがあるという馬が4頭もいるので、POGで指名するとストレスがたまるかもしれませんね。
ただ、こうして見ると、ディープ×BMSトニービンは勝ち上がり率も重賞での実績も上々で、あとは本格化に時間がかかることと勝ち味に遅いことを、どう考えるのかということになるでしょう。
(2)ベガとクライウィズジョイ
サトノノブレスの母クライウィズジョイは、ベガとは父が同じトニービンで、ベガの母アンティックヴァリューが、クライウィズジョイの3代母という関係になっています。
つまり、間にオールウェイズランラッキーとアイリッシュリヴァーの2頭の種牡馬が挟まっているわけです。
アイリッシュリヴァーは、ディープと相性のよいリヴァーマン産駒で、リヴァーマンの代表的な後継種牡馬の1頭です。アイリッシュリヴァーの母アイリッシュスターには、スウィートラヴェンダー3×5のクロスがあり、しかも母系はマーチェッタ~ラヴェンデュラ~スウィートラヴェンダー直系なので、スウィートラヴェンダー=ローズレッド7×8・7の全姉妹クロスを持つディープとは好相性でしょう。
問題は、オールウェイズランラッキーのほうです。競走馬しては、G3を1つ勝った程度の馬で、種牡馬としては、重賞勝ち馬を出せなかったようです。とりたてて良血馬というわけでもなく、二流種牡馬というより三流四流というレベルの種牡馬でしょう。となると、こういう種牡馬が血統表の中に入り込んだ場合、そこが血統のキズとなる心配が出てきます。
以前、ディープは血統のキズになりそうな馬でも、一流の血で構成されていれば、そこから一流の要素を引っぱり出せるということを指摘しました。しかし、オールウェイズランラッキーの父ホワットアラックは、二流種牡馬といっては気の毒かもしれませんが、けして一流種牡馬ではありませんでしたし、オールウェイズランラッキーの母系も平凡です。
そうなると、かなり危険な感じがするわけですが、個人的には、意外に大きなキズにはならずに済んでいるのではないかと考えています。その点について、次の(3)で検討してみましょう。
(3)トニービンとナスルーラとハイペリオン
トニービンが、ナスルーラ系×ハイペリオン系の配合であることは、当ブログでも何度も触れてきました。望田潤氏は、トニービンの配合相手にも、ナスルーラとハイペリオンの血が重要だと指摘されています。
その意味においては、オールウェイズランラッキーは、ナスルーラ系×BMSハイペリオン系の配合で、BMSデルタジャッジの配合もナスルーラ系×BMSハイペリオン系、母ビッグパドルズには、アリバイ(父ハイペリオン)3×4のクロスがあります。また、全体に米国血脈が多いので、欧州血脈主体のトニービンとは相性がよいのではないかと考えられるわけです。
したがって、オールウェイズランラッキーの血がキズになるとしても、最小限のキズにとどまっているのではないかと推測されます。
(4)ディープ×BMSトニービンに必要なもの
サンデー系×トニービンの配合の定石は、サンデー系×トニービン×ノーザンダンサー系の形であることは、以前に触れました。とにかく、サンデーとトニービンが柔らかいので、硬さを補うことが必要です。しかし、サンデー系種牡馬の中でも特に柔らかい部類のディープの場合、この基本定石だけでは、完成が遅れて古馬になってから活躍しだすということになりかねません。グルヴェイグは、その典型でしょう。
では、どうするかということなのですが、こういう場合の常套手段として、まずラトロワンヌの血を試してみたらどうかというのが1つの処方箋になります。ディープ×BMSトニービンの産駒には、ラトロワンヌの血を持つ馬が意外なほど少ないようです。その点では、サトノノブレスにはナスキロラトロのリヴァーマンの血があるので、合格点でしょうか。そういえば、ディープ×ファルヴラブ×ベガ(父トニービン)のハープスターは、2歳の時点で重賞に勝ちましたが、ファルヴラブにラトロワンヌが3本あるのが効いていると思われます。ハープスターを参考に、ディープ×BMSトニービンの配合では、ラトロワンヌの血の活用を積極的に試してみたら面白いのではないでしょうか。
サトノノブレス(菊花賞)
http://www.keibado.com/keibabook/131021/photo04.html
サトノノブレス(2歳)
http://www.jbis.or.jp/horse/images/0001119611_1/
サトノノブレス(1歳・セレクトセール)
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/54/5e2b975ddc8db980cf3760722f7daa1d.jpg
サンデーサイレンス
http://www.pharlap.net/wp-content/uploads/2012/06/sundaysilence2.jpg
ディープインパクト
https://livedoor.4.blogimg.jp/jrdbjp/imgs/2/e/2e0bbb10.gif
トニービン
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/99/TonyBin.jpg
さて、馬体についても見ておきます。
見てのとおりの好馬体で、昨年のディープ産駒の馬体評価リストでは、牡馬の8位にあげました。
気になるところがあるとすれば、父ディープにもBMSトニービンにも似ていないところですが、実は、祖父のサンデーに似ています。ディープは、あまりサンデーに似た産駒は出さないかもしれませんが、時折こうして祖父似の仔が出るようです。
続いて、4着のラストインパクトにも触れておきましょう。
http://www.jbis.or.jp/horse/0001120507/pedigree/
まず血統から見ていくことにしますが、何といっても目立っているのは、母スペリオルパールが、3冠馬ナリタブライアンの半妹だということです。
ナリタブライアン
http://www.jbis.or.jp/horse/0000249114/pedigree/
ナリタブライアンの母系であるパシフィックプリンセスの一族が、ディープとの相性が抜群であるということは、キズナに関連した投稿で何度も指摘してきました。
BMSのティンバーカントリーは、競走馬としては文句なく一流馬でしたが、種牡馬としてはアドマイヤドンが目立つだけの一発屋の感もあります。
しかし、注目すべきは、その母が偉大な繁殖牝馬であるフォールアスペンだということです。フォールアスペンは、自身もG1勝ち馬でしたが、母として4頭のG1馬を含む7頭の重賞勝ち馬を出し、孫の代になってもG1を5勝した超大物ドバイミレニアムなどG1馬が多く出て、日本でも曾孫のレジネッタが桜花賞に勝ちました。とにかく、恐るべき名牝といってよいでしょう。
そして、このフォールアスペンの血が、ディープとパシフィックプリンセス牝系の血との相互作用により、有効に機能しているのではないかと考えられるのです。
フォールアスペンの配合の核は、ハイペリオン3×4にあり、そこにサンインロー5×5も絡んだハイインローを両方ともクロスさせる形となっています。それだけでなく、ハイペリオンの半妹ハンターズムーンの血があるのもポイントが高いです。
これに対して、ディープの4代母ハイライトはハイペリオン3×2、ラストインパクトの4代母フィジーはハイペリオン≒オールムーンシャイン3×3の4分の3兄妹クロスということですから、フォールアスペン&ハイライト&フィジーの3頭の牝馬のハイペリオンによる結び付きは、強力というべきでしょう。
以前にも触れましたが、ディープは、母系に大量のハイペリオンを抱えた牝馬とは好相性です。マルセリーナ、トーセンラー、デニムアンドルビーなどが代表的な例としてあげられます。こうした大量のハイペリオンの血は、成長力にも大きなプラスなので、ラストインパクトは古馬になってもまだまだ力をつけていくと期待してよいと思います。
とにかく、「なんだ、BMSがティンバーなのか」というところで思考停止してしまったら、ラストインパクトの配合は理解できません。フォールアスペン&ハイライト&フィジーの3頭の関係のほうが、はるかに重要なのです。
なお、ディープとフォールアスペンの関係では、エリザベス女王杯3着のピクシープリンセスの3代母がフォールアスペンです。
ピクシープリンセス
http://www.jbis.or.jp/horse/0001096751/pedigree/
さて、馬体の方も見ておきましょう。
神戸新聞杯
http://www.keibado.com/keibabook/130923/photo04.html
2歳
http://yakifish.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2012/04/27/201204.jpg
1歳
http://yakifish.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2011/11/29/photo.jpg
あまりディープ産駒には見かけないような体型ですが、ディープとサンデーとティンバーカントリーを足して3で割ったような馬体という感じでしょうか。
昨年のディープ産駒の馬体評価リストでは、牡馬の10位タイにあげましたが、正直なところ、まだちょっと特徴を充分には把握できておらず、もどかしいところです。
ティンバーカントリー
http://www.jbis.or.jp/horse/images/0000333901_1/
ロンシャン競馬場で行われたニエル賞(仏G2・芝2400m)で、キズナが優勝しました。
2着はルーラーオブザワールド、3着はオコヴァンゴでした。
詳しくは、また後ほど。
http://www.youtube.com/watch?v=dXo390ZNgU8
http://www.jra.go.jp/news/201309/091603.html#1
http://race.sanspo.com/keiba/news/20130915/ove13091521490002-n1.html
長らくタイトルだけで本文の無い状況で放置してしまいましたが、9月も終わりの今頃、ひっそりと本文をアップします。
http://www.youtube.com/watch?v=lsaKdmPb2Yg
http://db.netkeiba.com/race/201305021210/
スタートから後方に下げたキズナは、道中はずっと後ろから3~4番手の位置でじっとしていましたが、直線に入ると外へ持ち出し、豪快に2着エピファネイア以下を差し切り、ディープインパクト産駒のダービー2年連続制覇を成し遂げました。
こう書くと何の問題もなく終わったかのように見えますが、勝ったキズナと2着のエピファネイアは、ともに1度ずつ大きな不利がありました。
先に不利があったのはエピファネイアで、3コーナーあたりで躓き、大きくバランスを崩すシーンがありました。さいわい、ポジションが下がるようなことはありませんでしたが、不利があったことは確かです。
一方、キズナの不利は、直線で外に持ち出すときに発生しました。いざゴーサインという時に、タマモベストプレイが外にヨレて、キズナの進路がカットされたのです。動画を何度か見直したのですが、どうやらコディーノが外に出した時に、ミヤジタイガが弾かれて外にフクれ、それに押されてタマモベストプレイがキズナの進路に被さってくるという、玉突き型の連鎖になっていたようです。追い出すタイミングで前をカットされたキズナは、いったん後方2番手まで下がってしまい、そこからエンジンをかけ直しての追い込みとなったので、やはり大きな不利だったと言えるでしょう(パトロールビデオの2分10秒すぎあたりです)。
どちらの不利のダメージが大きかったかは一概には言えませんが、もし両馬とも不利なくスムースにレースが運べていれば、2頭で後続を引き離しての叩きあいになっていたことだけは確実です。戦前には「4強対決」との下馬評でしたが、東京2400mという条件においては、1~2着馬の力が抜けていたと思います。
http://www.jbis.or.jp/horse/0001120570/pedigree/
さて、キズナの血統を見ていきましょう。
桜花賞馬ファレノプシスの半弟で、従兄弟にはナリタブライアンやビワハヤヒデがいます。早田牧場がブレイクさせたパスフィックプリンセス一族ですが、早田牧場の倒産後は何となく勢いに欠ける状況が続き、一族の馬としては久しぶりのG1タイトルとなります。
配合は、アユサンやヒラボクディープなど、今年注目を集めたディープ×BMSストームキャットです。
以下、パシフィックプリンセス牝系とBMSストームキャットの2点に絞って見ていくことにします。
(1)パシフィックプリンセス一族
先ほど「早田牧場がブレイクさせた」と書きましたが、実際、海外ではそれほど大きな実績があるわけでもない牝系です。少なくとも、ビワハヤヒデ、ナリタブライアン、ファレノプシスと立て続けに大物を輩出させるようなレベルの系統ではなかったはずなのです。
しかし、パシフィックプリンセスは米G2・デラウェアオークスに勝ち、その母フィジーはコローネーションS(現在は英G1)に勝っているので、ブレイクの兆しのようなものはありました。パシフィカス(パシフィックプリンセスの娘&ナリタブライアンの母)は、競争成績も輸入前の繁殖成績も平凡でしたが、購入に踏み切った早田牧場の先見の明の勝利だと言えるでしょう。
パシフィカスの成功を受けて、その妹たちが根こそぎ日本に輸入されていきますが、ノースヒルズの牧場名がまだマエコウファームだった時代に輸入されたのが、パシフィカスの半妹にしてキズナの母のキャットクイルでした。
それでは、まずパシフィックプリンセスの血統について検討していきます。
パシフィックプリンセス
http://www.jbis.or.jp/horse/0000393762/pedigree/
パシフィックプリンセスの母フィジーが、コロネーションSに勝ち、繁殖牝馬としてもフリートワヒネ(ヨークシャーオークス)のようなG1馬を出したことが、のちのこの系統のブレイクへの第1歩となりました。
まず、フィジーの母リフィフィがファロス=フェアウェイ3×3、フィジーの3代母フェアタームズはチョーサー3×3と、強いクロスで活力を蓄積させてきたことは見逃せません。
そうした蓄積を受けて、フィジーは、ハイペリオン≒オールムーンシャイン3×3の4分の3兄妹クロスで、一気に溜め込んだ活力を爆発させることに成功しました。
血統表を見ていただくと分かるのですが、ハイペリオン&オールムーンシャイン兄妹の母セレーネはチョーサー産駒ですし、ファロス&フェアウェイの全兄弟の母スカパフローもチョーサー産駒ですから、ここに全ての活力が有機的に結びつけられたのです。
チョーサーはセントサイモン産駒で、20世紀最高のBMSと言われ、ファラリス×BMSチョーサーのニックスからナスルーラ系、ノーザンダンサー系、ミスプロ系など現代の有力父系が送り出されました。
ハイペリオンはこのブログにもよく登場しますが、父系はハンプトン系とはいえ、その配合的な核はセントサイモン4×3にあります。
さて、パシフィックプリンセスは、そうしたハイペリオン~セントサイモン色の強い母フィジーに、米国ダート血統のダマスカスを交配することで誕生しました。
典型的な、米国血脈×欧州血脈の配合ですが、欧州と米国をうまく融和させるような工夫もなされています。それが、ファラモンド=シックル≒ファロス=フェアウェイ5・6・4×5・5の4分の3同血クロスと、スウィートラヴェンダー=ローズレッド6×4の全姉妹クロスです。
ファラモンド、シックル、ファロス、フェアウェイは、ファラリス×BMSチョーサーから生み出された種牡馬の四天王的な存在で、ファラモンドとシックル、ファロスとフェアウェイが、それぞれ全兄弟となります。この4頭の血は、どこにでも当たり前のように出てくるので、多少のクロスが発生しても「またか」という感じでスルーされてしまうことも多いのですが、4頭の揃い踏みによる4分の3同血クロスは珍しいでしょうし、配合の核心に関わってくるケースですから無視は出来ません。さらに重要なのは、ファラモンド&シックルの母セレーネは、ハイペリオン&オールムーンシャインの母でもあるということです。
この有機的に絡みあう配合の素晴らしさは、もともとの牝系が中堅級であったことを考えると、配合によって牝系を人為的にグレードアップさせたといっても過言ではありません。この見事な配合によって、パシフィックプリンセス一族のブレイクの準備は完了したと考えてよいでしょう。
それに較べると、スウィートラヴェンダー=ローズレッド6×4の全姉妹クロスの役割は、あまりにも小さいもののように見えますし、実際、パシフィックプリンセスのことだけを考えるならば、その通りでしょう。しかし、最終的にキズナの父がディープであることを考慮するなら、とたんに重要性が増してくるのです。ディープには、スウィートラヴェンダー=ローズレッド7×8・7の全姉妹クロスがあるので、ディープとパシフィックプリンセス牝系の相性という点において、決してその役割は小さくはないのです。
(2)ディープ×BMSストームキャット
今年、一気にブレイクしたこの配合については、これまでにも触れてきましたし、今さら付け加えることがあるわけでもありません。簡単におさらいするなら、スマートなディープにパワーを補いつつ、サーゲイロード≒セクレタリアト6×4の相似クロスが発生するのがポイントです。
ここでは、母キャットクイルのストームキャット×パシフィックプリンセスの配合について、ディープとの関係も考慮しつつ検討することにしましょう。
ストームキャットは、ストームバード×BMSセクレタリアトの配合で、祖母クリムゾンセイントは、名種牡馬ロイヤルアカデミーの母でもあります。
母系は、米国の名門チェロキーローズ牝系で、日本ではこの系統からオルフェーヴル&ドリームジャーニー兄弟が出ました。
配合的には、クリムゾンセイントとストームバードの母サウスオーシャンは、米国血脈中心で、特にサウスオーシャンはテディ系の血が濃厚です。
そのため、ストームキャットは、ダート血統のように思われてきたのですが、昨今テイルオブザキャットやヨハネスブルクの産駒の日本での活躍を見ると、安直にダート血統と決め付けてよいかには問題が残ります。ストームキャットの父ストームバードや代表産駒ジャイアンツコーズウェイは、現役時代は芝で活躍しましたし、産駒にも芝での活躍馬が多く出ています。ストームキャットも、種牡馬としては、芝のG1勝ち馬も少なくないのです。
にもかかわらず、ストームキャットはダート向きと思ってしまうのは、ストームキャットの米国血脈の中でも特に濃厚なテディの血に対して、なんらかの誤解があるのかもしれません。
テディ系というと、マンノウォー系やヒムヤー系とともに、アメリカの古くからの土着父系の代表的な存在であるかのように思われがちなのですが、実は、テディ自身はフランス産馬で、フランスのリーディングサイアーを獲得したこともあるのです(1923年)。代表産駒のサーギャラハッド&ブルドッグ兄弟もフランス産馬で、サーギャラハッドは仏2000ギニーに勝っています。のちに、この兄弟がアメリカに輸出され、兄弟そろって北米リーディングサイアーになることで、一気にアメリカでテディ系のブームが爆発することになるのです。
テディ自身は、晩年までフランスで暮らしていましたが、1931年に大恐慌の影響でオーナーが破産しアメリカに売却されました。すでに18歳と高齢だったので、さほどの活躍馬を出せませんでしたが、サンテディという現在のG3相当の重賞を2つ勝った程度の馬が、結果的に今日まで断絶せずに残ったテディ系の唯一の後継分枝を築き上げることになります。
さて、あまり強調されないことですが、テディの代表産駒の母馬たちは、ほとんどがセントサイモンの血を抱えています。セントサイモンの血の流行の凄まじさからすれば、それもある程度は理解できるのですが、ほぼ全てという状況は、やはり注目せざるをえないだろうと思われます。
こうした傾向の要因は、テディの配合に求められるでしょう。19世紀後半から20世紀前半の血統的な流行は、ストックウェルとセントサイモンの19世紀の2大巨頭の血の融合にあったことは、以前にも触れました。しかし、テディの場合、その父も母も、ストックウェルとセントサイモンではなく、ストックウェルとガロピン(セントサイモンの父)の組み合わせになっているのです。しかも、テディの3代父オームの母アンジェリカは、セントサイモンの全姉にあたります。
テディ
http://www.jbis.or.jp/horse/0000334918/pedigree/
したがって、テディという種牡馬は、お相手にセントサイモンを持つ牝馬との交配がピッタリだったと考えられます。テディの血統全体が、セントサイモンの血を欲しがっているという感じでしょうか。
というわけで、テディの血を多く抱え込んでいる馬は、必然的にセントサイモンの血ももれなく付随している可能性が高いのです。
そして、それは、パシフィックプリンセスの父ダマスカスにも当てはまります。ダマスカスは、先ほど名前のあがったサンテディの系統で、テディ系を現代に伝える後継者の役割を背負った馬です。競走馬としても恐るべき強さを発揮した馬でしたが、先に見たように、配合はファラモンド≒ファロス≒シックル4×6・3の4分の3同血クロスが核になっています。ファラモンド&シックルのBMSチョーサーがセントサイモン産駒なのも、先ほど確認したとおりです。
さらに、ストームキャットの血統的な軸であるノーザンダンサーとセクレタリアトについても、簡単に触れておきます。ノーザンダンサーもセクレタリアトも、父系はファラリス×BMSチョーサーのファロスから出ています。ノーザンダンサーの父ニアークティックのBMSはハイペリオンですから、トータルとして、ノーザンダンサーもかなりセントサイモンの血が入ってます。他方、セクレタリアトのBMSプリンスキロは、父系を遡ればセントサイモンの直系です。
こうして見てくると、キャットクイルの血統は、ストームキャット×BMSダマスカスという、いかにもダート向きのような配合に見えて、その裏には、セントサイモンの血が充満していたことが理解されるのです。
最後にディープの血統についても確認しておくと、父系もBMSの父系もファラリス×BMSチョーサーのファロスから出ていますし、母系にはハイペリオンの血が大量にあります。
とくに注目されるのは、ディープの4代母ハイライトの配合です。ハイライトの父ボレアリスは、ブリュムー×オーロラですが、ブリュムーはテディ系で、オーロラはパシフィックプリンセスのBMSの母でもあります。そして、ハイライトには、ハイペリオン3×2という強いクロスがあります。
血統表を較べてみると、ハイライトの配合は、パシフィックプリンセスやフィジーの配合と大きな共通性があることが見えてくるでしょう。このハイライトとフィジー~パシフィックプリンセス母娘との配合的な類似性は、ディープ×パシフィックプリンセス一族という配合を支える大きな基盤となっているのです。
ハイライト
http://www.jbis.or.jp/horse/0000390923/pedigree/
こうして順を追って辿ってみると、ディープとパシフィックプリンセス一族は、きわめて相性がよさそうだということが分かります。とくに、ハイライトとフィジー~パシフィックプリンセス母娘との配合的な類似と、スウィートラヴェンダー=ローズレッドの全姉妹クロスの継続の2点は重要です。
それを裏付けるかのように、今年の3歳馬には、もう1頭のディープ×パシフィックプリンセス一族の活躍馬がいます。それが、青葉賞3着のラストインパクトです。
ラストインパクト
http://www.jbis.or.jp/horse/0001120507/pedigree/
こちらは、母スペリオルパールが、ナリタブライアンの半妹になります。
ディープ×パシフィックプリンセス一族から立て続けに活躍馬が出ているのは、決して偶然ではないのです。今後もこの配合パターンはちょくちょく見かけることになると思いますが、前評判がよければ逆らわずに取りにいくべきでしょう。
さて、馬体面にも触れておくと、ディープとストームキャットの良いところ取りといった感じです。
ディープ×ストームキャットの配合では、ストームキャット丸出しといったゴツい馬も多いのですが、キズナは、胸前の筋肉の立派さはストームキャット、バネのありそうなトモはディープと、両方の良さを受け継いでいます。
昨年の馬体評価では、ディープ牡馬の2位にあげました。
ダービー
http://www.keibado.com/keibabook/130527/photo03.html
弥生賞
http://www.keibado.com/keibabook/130304/photo09.html
最後に、4強対決と言われた他の3頭についても、ひと言ずつコメントしておきます。
まず、2着エピファネイアですが、皐月賞に続いての2着ということで、G1制覇のためには、かかり癖をどこまで改善できるかでしょう。
とはいえ、そういう分かりきったことだけ書いても面白くないので、ちょっと馬体について気付いたことを記しておきます。
もっと強調されてもいいと思うのですが、エピファネイアの馬体は、母シーザリオそっくりです。父シンボリクリスエスの要素はどこにあるのか判らないくらい、シーザリオと瓜二つです。
「本当かな」と思われる方は、是非ご自分の目で確認してみてください。
エピファネイア(皐月賞)
http://www.keibado.com/keibabook/130415/photo03.html
シーザリオ(オークス)
http://www.keibado.com/keibabook/050523/photo10.html
シンボリクリスエス(ダービー)
http://www.keibado.com/keibabook/020527/photo10.html
5着ロゴタイプは、距離が長かったというのも事実だと思いますが、望田潤氏は、府中より中山向きの配合だと指摘されています。
あらゆる意味で、ダービーより皐月賞向きの馬だったということなのでしょう。
ロゴタイプ
http://www.jbis.or.jp/horse/0001124405/pedigree/
9着コディーノも、距離が長かったとは思うのですが、もっと大きな問題が他にあるのではないでしょうか。
それは、札幌2歳Sのころから馬体の成長が、ほとんど感じられないということです。
そこで思い出されるのは、昨年のダービーで10着だったグランデッツァです。コディーノもグランデッツァも、札幌2歳Sのころの馬体の完成度は飛び抜けており、1頭だけ3歳馬が紛れこんだのではないかというほどでした。しかし、その後は馬体の成長が感じられず、徐々に他馬に追いつかれ、最終的には追い抜かれてしまったということなのでしょう。
コディーノに関しては、もう成長は打ち止めなのか、それともまだ伸びしろがあるのかということが、今後の行方を左右することになると思います。
コディーノ(ダービー)
http://www.keibado.com/keibabook/130527/photo04.html
コディーノ(札幌2歳S)
http://www.keibado.com/keibabook/120903/photo13.html
参考動画
皐月賞
http://www.youtube.com/watch?v=5q1Z9CICC7g
京都新聞杯
http://www.youtube.com/watch?v=rl50zsMO27o
毎日杯
http://www.youtube.com/watch?v=hjdGoYUkA78
弥生賞
http://www.youtube.com/watch?v=ySK1Uw_JLbY
ラジオNIKKEI杯2歳S
http://www.youtube.com/watch?v=gRejacLIhp8
Copper